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物基12 鉛直投射・鉛直投下

鉛直投下

 小球を「静かに」離すときは、初速度\(v_0=0\)の自由落下ですが、思いっきり下に投げつけるようにして、初速度を持たせて物体を落下させることもできますね。

 このような落体の運動を「鉛直投下」もしくは「鉛直投げ下ろし」と言います。

 鉛直投下鉛直投射も、加速度運動の一種ですので、等加速度運動の3公式を覚えて、ちょっと公式を加工して使います。

 

 鉛直投下の公式加工のポイントは次の通り。

① 加速度は\(a\)の代わりに\(g\)を用いる

② 変位は\(x\)の代わりに\(y\)を用いる

③ 鉛直下向きに動き出すので、鉛直下向きを正とする

 

等加速度3公式は

 \(v=v_0+at\)

 \(x=v_0t+\displaystyle\frac{1}{2}at^2\)

 \(v^2-v_0^2=2ax\)

 

から

 

 \(v=v_0+gt\)

 \(y=v_0t+\displaystyle\frac{1}{2}gt^2\)

 \(v^2-v_0^2=2gy\)

 

と書き換えられます。

問題は自由落下の方がシンプルですが、公式暗記としては鉛直投下の方が、等加速度3公式に似ているので覚えやすいですね。

鉛直投射

 物体を上に投げつけるような落体の運動を「鉛直投射」もしくは「鉛直投げ上げ」と言います。

 鉛直投射の公式加工のポイントは次の通り。

① 加速度は\(a\)の代わりに\(-g\)を用いる

② 変位は\(x\)の代わりに\(y\)を用いる

③ 鉛直上向きに動き出すので、鉛直上向きを正とする

 

等加速度3公式は

 \(v=v_0+at\)

 \(x=v_0t+\displaystyle\frac{1}{2}at^2\)

 \(v^2-v_0^2=2ax\)

 

から

 

 \(v=v_0-gt\)

 \(y=v_0t-\displaystyle\frac{1}{2}gt^2\)

 \(v^2-v_0^2=-2gy\)

 

と書き換えられます。

鉛直投鉛直投の公式の違いは重力加速度が\(g\)なのか\(-g\)なのかという1点のみですが、これが曲者ですね。

 

 慣例的に、正の向きは初速度の向きに設定します。なので、鉛直投の場合には、向きに投げ下ろしますので向きを正としていて、鉛直投の場合には、向きに投げ上げますので向きを正とします。

 

 この影響が、重力加速度の向きに出てきてしまっていて、鉛直投下は下向きを正にして、下向きの重力を受けますので、重力加速度は\(+g\)のままでいいんですが、鉛直投射は上向きを正にしてしまったにも関わらず、重力は下向きにかかりますので、重力加速度は\(-g\)としなくてはいけなくなります。

 

 慣れるまでは、ややこしく感じたり難しく感じたりするかもしれませんが、ある程度勉強していくと、当たり前すぎてどうでもいい話だと感じるようになるでしょう。

 

▼鉛直投下

 \(v=v_0+gt\)

 \(y=v_0t+\displaystyle\frac{1}{2}gt^2\)

 \(v^2-v^0=2gy\)

 

▼鉛直投射

 \(v=v_0-gt\)

 \(y=v_0t-\displaystyle\frac{1}{2}gt^2\)

 \(v^2-v_0^2=-2gy\)

 

鉛直投下は、鉛直下向きを正にとり、加速度は\(+g\)

鉛直投射は、鉛直上向きを正にとり、加速度は\(-g\)

となり、加速度の向きが異なっています。

早見表

■公式書き換えに関する一覧

運動形態 初速度 加速度  軸 
等加速度直線運動 \(v_0\) \(a\) \(x\)
自由落下 \(0\) \(g\) \(y\)
鉛直投下 \(v_0\) \(g\) \(y\)
鉛直投射 \(v_0\) \(-g\) \(y\)

 

■公式一覧

運動形態 速度公式 変位公式 2乗公式
等加速度直線運動 \(v=v_0+at\) \(x=v_0t+\displaystyle\frac{1}{2}at^2\) \(v^2-v_0^2=2ax\)
自由落下 \(v=gt\) \(y=\displaystyle\frac{1}{2}gt^2\) \(v^2=2gy\)
鉛直投下 \(v=v_0+gt\) \(y=v_0t+\displaystyle\frac{1}{2}gt^2\) \(v^2-v_0^2=2gy\)
鉛直投射 \(v=v_0-gt\) \(y=v_0t-\displaystyle\frac{1}{2}gt^2\) \(v^2-v_0^2=-2gy\)

 

スマホで見る人は、最適化されるせいで逆に見にくいですが、横向き表示するなどして、なんとかしてください。