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波動1 波の干渉

波の干渉

 複数の波源から発生した波が重なって、振動が強め合ったり、弱め合ったりする現象を波の干渉といいます。

 

 このとき、波源から出る波は一般的にはそれぞれランダムですので、どんな波が発生しているのかは分かりません。ですが、高校物理では、まずは理想的な物理現象から理解することを目指しますので、2つの波源から、完全に同じ波が発生しているような特別な例を考えたりします。

 

 2つの波源から全く同じ波が発生しているとき、これらの波源のことを同位相源とよびます。また、片方の波源から山を発生させ、もう片方の波源からは谷を発生させ、常に山と谷が逆になるように波を発生させるような波源を作ったとすると、それらの波源のことを逆位相源とよびます。

 

 高校物理では、このどちらかが出題されることがほとんどです。もっと言うと、基本的な問題ではほぼすべて、同位相源を前提として干渉の話が進められていきます。

 

▼干渉波の波源

 同位相源:2つの波源から全く同じ波が発生する

 逆位相源:2つの波源から山と谷が逆転した波が発生する

 

強め合う点と弱め合う点

 波の干渉の問題では大きく2つのパターンの問題があります。一つは、図のように波面が描かれている問題で、もう一つは波面が描かれていない問題です。

 

 まずは波面が描かれているパターンで押さえておきたい知識をなぞっていきましょう。

 

 図の波面では、同位相源から出る波面が描かれています。実線が波の山の波面を表していて、点線は谷の波面を表していることにしておきます。

 波の山と山が重なると、波は合成されて大きくなります。また、谷と谷が重なったときも、合成波の振幅は大きくなります。

 

 そこで、波面の中にある、実線と実線、点線と点線が重なりあうところを探して、●で点を書いていくことにしましょう。

 

 すると、波源のちょうど真ん中の一直線上に綺麗に整列することがわかりました。

 

 そのほかの部分も全部●を書いていくと、このようになります。

 

 2つの波源をつないだ直線上に、水色の●で書いた2点がありますが、この部分、忘れやすいので気をつけてください。

 

 それから、波源自身もこの図の瞬間では、強め合いの点になりますね。

 そして、これらの強め合う●点どうしをなめらかにつないでやると、図のようになります。

 

 左右にも半直線が描かれますので、忘れず描いてあげてくださいね。

 

 このように、強め合う点どうしをつないだ線のことを腹線といいます。この図では、腹線が7本ありますね。

 

 腹線は、波源を焦点とした双曲線を描きます。双曲線は、その特性上、2次関数などと違って、遠方に行くと漸近線が描かれますので、この曲線は遠くに離れていくと直線のようにふるまいます。

 さらに今度は、実線と点線どうしが交わる点に○を書いていて、同じくなめらかにつないで双曲線を描いてやります。

 

 実線と点線どうしが重なる所では、山と谷が重なっていることを意味しますので、打ち消しあって、波は消滅しているはずです。

 

 このように、波が弱め合う点どうしをつないだ線のことを節線といいます。この図では、節線が6本ありますね。

 これらの点の一つ一つは、時間が経過するとともに、双曲線に沿って外へ外へと広がっていきます。

 

 実際に一つの波面に着目して、少しだけ輪が広がったときの交点が、元の位置と比べてどのように動くのかを確認してみると、きちんと双曲線に沿って外側にひろがっていくのが分かると思います。

経路差と波の干渉

 もう一つのパターンは、さっきのように波面が素直に描かれていなくて、波源\(A\)と\(B\)があり、そこから離れた点\(P\)や点\(Q\)では、強め合っていますか?弱め合っていますか?というパターンの問題です。

 

 波面が描かれていれば、そこが実線どうしの交点なのか、点線どうしの交点なのかを読むだけで即座に判断できますが、波面が描いていないので、どうしようもない。こういうときはどのように考えたらいいのでしょうか。

 

 波面を描いてみると、図のような感じになります。こうやって波面と重ねてみると、一目瞭然ですね。

 

 この図のような設定のとき、\(AP\)は点\(A\)から点\(P\)まで、点線、実線、点線、実線と続いていますので、波長を\(\lambda\)とすれば、\(AP=2\lambda\)だということが分かります。

 

 同じように\(BP\)も線を数えていくと、\(BP=3.5\lambda\)だということが分かります。

 

 このとき、\(AP\)と\(BP\)の長さの差が\(1.5\lambda\)となり、半波長分のズレが発生しています。2つの波を重ねたとき、半波長分のズレがあると、山と谷が重なることになってしまいますので、波は打ち消しあって消滅してしまいます。

 

 なので、点\(P\)では、実線と点線が重なることになり、弱め合う点となりますね。

 

 一方の点\(Q\)については、線を手掛かりに数えていくと、\(AQ=2\lambda\)、\(BQ=4\lambda\)となりますので、その差は\(2\lambda\)となります。ちょうどぴったり2波長分だけズレがあるので、2つの波は上手に重なりあって、点\(Q\)では強め合いの点が来ることになりました。

 

 このように、2つの経路を求めておいて、その差が波長の整数倍になるときには、実線どうし、点線どうしが重なることを意味していて、波は強め合います

 経路差に「.5」という数字(半整数という)が現れるときは、実線と点線が重なることを意味しますので、波は弱め合います

 

 

▼波の干渉条件

 

 \(|AQ-BQ|=m\lambda\) \((m=0,1,2...)\) 強め合う

 

 \(|AP-BP|=m\lambda+\displaystyle\frac{1}{2}\lambda\) \((m=0,1,2...)\) 弱め合う