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物基20 2物体の運動方程式

系と力の種類

 

ここで、新しい用語を3つほど紹介します。

 系  考察の対象として着目している部分全体

 外力 系の外部から加わる力

 内力 系の内部ではたらく力

 

 運動方程式を解くにあたって複数の物体が出てきたら、それに合わせて力の数も増えていきますので、どの力がどの物体にかかっているのかを正確に見極めなければなりません。このとき、どの部分に注目するかで考え方が変わってきます。この「どの部分を注目しているか」の範囲全体のことを「系」と呼びます。

 例えば、天体の動きを考えるときに、太陽を中心とする星だけを考えるのであれば「太陽系」、食物連鎖が複雑に絡み合った食物網を、炭素の循環まで含めて考えた「生態系」、たくさんある物体のうち、止まっているものだけに注目した「静止系」、回転している世界にだけ注目した「回転系」などがあります。

 力学では、これらの「系」の外から力を加えた場合、その力のことを「外力」と呼び、「系」の内部でお互いが及ぼし合っている力のことを「内力」と呼びます。エレベーターに人が乗っている系を考えるとき、エレベーターごと外から力を加えて動かせば、その力は「外力」。このときエレベーターが人を押す力と、人がエレベーターを押す力は「内力」です。

 気を張って覚えるほどの用語ではありませんが、私が説明をする際に使っていく専門用語ですので、知っておいてください。「物体Aにはたらく力全体を考えると~」のような言葉を「A系で~」に短縮できたりするんです。問題文にもあまり登場しません。

 

 

2物体の運動方程式の問題パターン

 

 2物体の運動方程式が出てきたら、物体ごとに運動方程式を立てる必要が出てきます。分野で言えば連立運動方程式という単元に入っています。

 2物体の運動方程式は、連立式になって話がややこしそうですが、それでも物体は2つですので問題パターンとしては限られてきます。大きく分けると接触2物体問題連結2物体問題の2パターンに分けられます。もう少し細かく見ていくと、接触2物体問題は2物体が横に並んでいるか、上に小さい箱が積んであるかの2パターン。連結2物体問題では、箱2つを軽い糸でつなぐか、質量のある糸や棒でつなぐか、滑車をはさんでつなぐかの3パターンくらいにまとめられてしまいます。

 それぞれ1つずつ解くのを経験しておけば、難関大の入試でもだいたいこれらのパターンのどれかだということには気づきますので、解きながら解答のキーになる部分をおさえておけばいいでしょう。

 

▼2体運動方程式の問題パターン

  接触2物体問題

   横接触、縦接触

  連結2物体問題

   質量のない糸で連結する問題

   滑車問題

   質量のある糸で連結する問題

 

 

接触2物体の運動方程式

 

ひとつ例を見ていきましょう。

なめらかな水平面上に質量\(3.0kg\)の物体\(A\)と質量\(2.0kg\)の物体\(B\)が接触していて、物体\(A\)を左から\(8.0N\)で押しているとします。このとき、

 (1)加速度\(a\)はいくらか

 (2)物体\(A\)が物体\(B\)を押す力\(f\)はいくらか

 

という問題を解くことにします。このとき、力\(F\)のように今から考えたい物体\(A\)や物体\(B\)の外から加えられた力は「外力」、\(AB\)間ではたらく力は「内力」です。また、系の範囲を少し変えて、物体\(B\)にだけ注目すれば、\(AB\)間ではたらく力も\(B\)にとっては外から押される力ですので「外力」になります。「内力」か「外力」かは考える系によって呼び方が変わるので注意が必要ですね。

 

 さて本題です。外力が物体\(A\)を押すと、そのまま物体\(B\)も道連れになって押されますので、2物体はずっと接触したまま同じ加速度で進んでいきます。よく聞く話として、じゃあ最初から一つにまとめてしまって\(5.0kg\)の箱を\(8.0N\)で押したことにすればいいんじゃないですか、という考えで解く人がいます。それも正解です。ただ、その方法だと(1)は簡単に解けますが、(2)は解けませんので、結局物体\(A\)と物体\(B\)に分けて、連立運動方程式を立てなければいけませんので、あくまでも別解のうちの1つにすぎないんですね。

 ちなみに私は「まとめる派」なので、先に1物体化して加速度を出してから次に進むのが好きです。この解法だと3物体、4物体と増えていくごとにお得感が増してきます。動滑車問題だけは慣れていないと注意が必要ですね。

 

まとめたとすると、\(5.0kg\)の物体を\(8.0N\)で押すだけですので、運動方程式は、

 \(5.0a=8.0\)

 \(a=1.6m/s^2\)

で終了です。

 でも、さっき説明したように、物体\(AB\)間にはたらく力を計算しようと思ったら、結局のところは物体\(A\)と物体\(B\)を分けて考えなければいけません。このとき、物体\(A\)には人が押す力や物体\(B\)と接触していることなどが関係して、ややこしくなりそうですが、物体\(B\)はただうしろから物体\(A\)に押されているだけなので、物体\(B\)についての運動方程式だけ考えるのが簡単そうです。

 物体\(B\)の運動方程式は、

 \(ma=F\) より

 \(2a=f\)

 

加速度は(1)で\(a=1.6m/s^2\)だったので、代入すると、

 \(2×1.6=f\)

 \(f=3.2N\)

 

これで両方の値が求まりましたね。