· 

物基29 力学的エネルギー

エネルギー

 エネルギーという言葉はよく聞くと思いますが、エネルギーとはつまり何ですか?と聞くと答えられる人は途端に少なくなってしまいます。エネルギーを端的に表現すること自体は中学3年生の理科で学習済ですので、もう一度確認しておきます。結論から言うと、『仕事をする能力』のことを言います。

 

 ある場所に物体が置いてあったとします。ここに、のすごい速さで何かをぶつけると、物体はいくらかの力を受けながらいくらかの距離だけ動きます。つまり仕事をするわけです。

 また、コーラを振っておき、誰かにキャップを開けてもらうと、キャップがものすごい勢いで飛んでいきコーラがあふれ出ます。これも、コーラやキャップにいくらかの力を働かせながらいくらかの距離を移動させるわけですから、仕事をしているわけです。

 ソーラーカーに太陽光を当ててみたり、電動ドリルに電流を流してみたりなど、仕事を生み出せるものは世の中にたくさんあります。このように、将来的に仕事を生み出す能力を持つもののことを総称して、エネルギーと言います。

 

▼エネルギーとは

 仕事をする能力のこと

 

 

位置エネルギー

 位置エネルギーは、「重さ」「高さ」に比例するエネルギーです。

 

 地面に釘が刺さっているとします。この真上10mの所から小球を落として釘にぶつけたとします。すると釘が地面にめり込みました。このとき、釘には摩擦力がはたらき、いくらかの距離だけ動くわけですから仕事をされていることになります。なので、物体が高い所にあるとき、ただそこに存在するだけでエネルギーを持つわけです。このようなエネルギーを位置エネルギーといいます。

 

 想像も容易なことですが、10mではなく20mから落とせば釘がめり込む程度は大きくなるでしょうし、小球ではなく、もっと重たい、鉄球かボーリングの玉か何かを落とせば、やっぱり釘のめり込み具合は大きくなるでしょう。

 

 物体の重さが2倍、3倍と増えると位置エネルギーも2倍、3倍と増えます。また、物体がある高さが2倍、3倍と増えると、同じように位置エネルギーも2倍、3倍と増えます。この関係を数式にすると次のように表せます。

 

▼位置エネルギー

\(U=mgh\)

 

\(m[kg]\) 質量

\(g[m/s^2]\) 重力加速度

\(h[m]\) 高さ

 

 

運動エネルギー

 運動エネルギーは、「質量」「速度の2乗」に比例するエネルギーです。

 

 壁に半分くらい刺さっている釘で、さっきと同じような実験を考えてみます。ぶつかる物体の質量が2倍、3倍と大きくなれば釘のめり込み方も2倍、3倍となり、ぶつかる物体が速くなればなるほど釘のめり込みの程度は大きくなります。この関係も数式にすると次のように表せます。

 

▼運動エネルギー

\(K=\displaystyle\frac{1}{2}mv^2\)

 

\(m[kg]\) 質量

\(v[m/s]\) 速度

 

 

 ここで、見落としやすいことに注目して再度説明します。位置エネルギーでは物体の「重さ」\(mg\)に比例していたのに対して、運動エネルギーは物体の「質量」\(m\)に比例しています。

 

 無重力空間で考えると、物体から手を離しても落ちる先がないので、\(g=0\)の環境では位置エネルギーは生じないわけですね。一方で、無重力空間だとは言っても、例えば宇宙空間で遠方から飛んできた隕石が宇宙船に衝突すれば大ダメージになりますから、運動エネルギーは無重力空間であっても存在するわけです。

 このあたりの違いは、特に気にしなくても問題を解く上ではミスになりにくいですが、読み落としやすい所であることには違いないでしょうから改めて確認しておきましょう。

 

 

弾性エネルギー

 あともう一つ、ばねが伸びたり縮んだりしていることによるエネルギーというものもあります。ここでは弾性エネルギーとして紹介しますが、正確に言えば「弾性力による位置エネルギー」と呼び、位置エネルギーの一種としてとらえます。

 

 ほかにも、静電気力による位置エネルギーなど、位置エネルギーとしてくくってしまうエネルギーが他にもたくさんあります。大学に行くと、これらの位置エネルギー(○○による位置エネルギー)は総称して「ポテンシャルエネルギー」という呼び方に変わりますので、意識高い物理受講生は、バネのポテンシャルが大きいとか小さいとかいう言い回しで勉強していっても面白いかもしれないですね。

 

▼弾性エネルギー

\(U=\displaystyle\frac{1}{2}kx^2\)

 

\(k[N/m]\) ばね定数

\(x[m]\) ばねの伸び

 

 

力学的エネルギー

 これらの3つのエネルギーが力学分野で主に登場するエネルギーですので、3つを合計して力学的エネルギーと呼ぶことにします。単純に3つとも足しただけなんですが、式にすると長く見えるので、急に難しい公式が登場したと勘違いしてしまう人もいます。冷静にとらえてください。

 

▼力学的エネルギー

\(E=\)運動エネルギー+位置エネルギー+弾性エネルギー

\(E=\displaystyle\frac{1}{2}mv^2+mgh+\frac{1}{2}kx^2\)