基本例題24と同じような考え方で解きましょう。
力学的エネルギーの保存を考えると、摩擦の分だけ違いが出てしましますので、理論を拡張させて、エネルギー保存を利用します。ここでは往復経路なので、「摩擦面」の欄を追加して、ここを1回通るごとに余分にエネルギーを使うことを強調しておきます。
ばね | A | 摩擦面 | B | C | |
位置エネルギー |
0 |
0 | ー | 0 |
\(mgh\) |
運動エネルギー | 0 |
\(\frac{1}{2}mv_A^2\) |
ー | \(\frac{1}{2}mv_B^2\) | 0 |
弾性エネルギー | \(\frac{1}{2}kl^2\) | 0 | ー | 0 |
0 |
摩擦による仕事 | 0 | 0 | \(\mu'mgS\) |
0 |
0 |
ばねの縮みは\(l\)、摩擦面の長さは\(S\)、点Cの高さは\(h\)など、距離や長さを表す文字にいろいろな設定がありますので、なんでもかんでも\(x\)としてしまわないように気をつけましょう。全て違う意味を表していますよ。
(1)
ばねのエネルギー=点Aでのエネルギー として、
\(\displaystyle\frac{1}{2}kl^2=\frac{1}{2}mv_A^2\)
\(kl^2=mv_A^2\)
\(v_A=l\sqrt{\displaystyle\frac{k}{m}}\)
ここで、\(\displaystyle\sqrt{\frac{k}{m}}\)は、単振動の分野で、角振動数\(ω\)として知られる物理量です。
単振動における振動中心の速さは
\(v=Aω\) (Aは振幅、ωは角振動数)
で表せることを知っていると、公式一発ですので計算が楽になります。
(2)
基本例題24との違いは、摩擦面を通り過ぎた後も、まだ斜面をのぼる分のエネルギーを残していることです。例24では、摩擦面ですべてのエネルギーを使い果たしてしまったので、「ばね=摩擦分」という単純な式で計算ができていましたが、今回はさらに斜面をのぼる分のエネルギーも右辺に書き足しておきます。
ばねで持っていたエネルギー=摩擦で使われるエネルギー+位置エネルギー として、
\(\displaystyle\frac{1}{2}kl^2=\mu'mgS+mgh\)
\(mgh=\displaystyle\frac{1}{2}kl^2-\mu'mgS\)
\(h=\displaystyle\frac{kl^2}{2mg}-\mu'S\)
文字が多くて難しそうに見えますが、式変形自体は移項とちょっとした割り算だけなので、数字で与えている問題より逆に難易度は低いかもしれません。変に計算するところがないので、式のデザインだけ複雑に見えるわけです。
(3)
[ⅰ]点Cからのエネルギーを考える
点Cの位置エネルギー=摩擦で使われるエネルギー+弾性エネルギー
\(mgh=\mu'mgS+\displaystyle\frac{1}{2}kx^2\)
\(\displaystyle\frac{1}{2}kx^2=mgh-\mu'mgS\)
前問より、
\(mgh=\displaystyle\frac{1}{2}kl^2-\mu’mgS\)
なので、
\(\displaystyle\frac{1}{2}kx^2=\frac{1}{2}kl^2-\mu’mgS-\mu'mgS\)
\(\displaystyle\frac{1}{2}kx^2=\frac{1}{2}kl^2-2\mu’mgS\)
\(kx^2=kl^2-4\mu'mgS\)
\(x^2=l^2-\displaystyle\frac{4\mu'mgS}{k}\)
\(x=\sqrt{l^2-\displaystyle\frac{4\mu'mgS}{k}}\)
[ⅱ]左端のばねからの運動を直接考える
最初のばねのエネルギー=摩擦面の往復分のエネルギー+最後のばねのエネルギー
\(\displaystyle\frac{1}{2}kl^2=\)\(2\)\(\mu'mgS+\frac{1}{2}kx^2\)
\(\displaystyle\frac{1}{2}kx^2=\frac{1}{2}kl^2-2\mu’mgS\)
\(kx^2=kl^2-4\mu'mgS\)
\(x^2=l^2-\displaystyle\frac{4\mu'mgS}{k}\)
\(x=\sqrt{l^2-\displaystyle\frac{4\mu'mgS}{k}}\)