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リ物基 基問105

基本例題24と同じような考え方で解きましょう。

力学的エネルギーの保存を考えると、摩擦の分だけ違いが出てしましますので、理論を拡張させて、エネルギー保存を利用します。ここでは往復経路なので、「摩擦面」の欄を追加して、ここを1回通るごとに余分にエネルギーを使うことを強調しておきます。

 

 

  ばね A 摩擦面 B C
位置エネルギー

0

0 0

 \(mgh\)

運動エネルギー 0

 \(\frac{1}{2}mv_A^2\)

 \(\frac{1}{2}mv_B^2\) 0
弾性エネルギー  \(\frac{1}{2}kl^2\) 0 0

0

摩擦による仕事 0 0 \(\mu'mgS\)

0

0

 

ばねの縮みは\(l\)、摩擦面の長さは\(S\)、点Cの高さは\(h\)など、距離や長さを表す文字にいろいろな設定がありますので、なんでもかんでも\(x\)としてしまわないように気をつけましょう。全て違う意味を表していますよ。

 

(1)

ばねのエネルギー=点Aでのエネルギー として、

\(\displaystyle\frac{1}{2}kl^2=\frac{1}{2}mv_A^2\)

 

\(kl^2=mv_A^2\)

 

\(v_A=l\sqrt{\displaystyle\frac{k}{m}}\)

 

ここで、\(\displaystyle\sqrt{\frac{k}{m}}\)は、単振動の分野で、角振動数\(ω\)として知られる物理量です。

単振動における振動中心の速さは

\(v=Aω\) (Aは振幅、ωは角振動数)

で表せることを知っていると、公式一発ですので計算が楽になります。

 

 

(2)

基本例題24との違いは、摩擦面を通り過ぎた後も、まだ斜面をのぼる分のエネルギーを残していることです。例24では、摩擦面ですべてのエネルギーを使い果たしてしまったので、「ばね=摩擦分」という単純な式で計算ができていましたが、今回はさらに斜面をのぼる分のエネルギーも右辺に書き足しておきます。

 

ばねで持っていたエネルギー=摩擦で使われるエネルギー+位置エネルギー として、

\(\displaystyle\frac{1}{2}kl^2=\mu'mgS+mgh\)

 

\(mgh=\displaystyle\frac{1}{2}kl^2-\mu'mgS\)

 

\(h=\displaystyle\frac{kl^2}{2mg}-\mu'S\)

 

文字が多くて難しそうに見えますが、式変形自体は移項とちょっとした割り算だけなので、数字で与えている問題より逆に難易度は低いかもしれません。変に計算するところがないので、式のデザインだけ複雑に見えるわけです。

 

 

(3)

[ⅰ]点Cからのエネルギーを考える

点Cの位置エネルギー=摩擦で使われるエネルギー+弾性エネルギー

\(mgh=\mu'mgS+\displaystyle\frac{1}{2}kx^2\)

 

\(\displaystyle\frac{1}{2}kx^2=mgh-\mu'mgS\)

 

前問より、

\(mgh=\displaystyle\frac{1}{2}kl^2-\mu’mgS\)

なので、

 

\(\displaystyle\frac{1}{2}kx^2=\frac{1}{2}kl^2-\mu’mgS-\mu'mgS\)

 

\(\displaystyle\frac{1}{2}kx^2=\frac{1}{2}kl^2-2\mu’mgS\)

 

\(kx^2=kl^2-4\mu'mgS\)

 

\(x^2=l^2-\displaystyle\frac{4\mu'mgS}{k}\)

 

\(x=\sqrt{l^2-\displaystyle\frac{4\mu'mgS}{k}}\)

 

 

[ⅱ]左端のばねからの運動を直接考える

最初のばねのエネルギー=摩擦面の往復分のエネルギー+最後のばねのエネルギー

\(\displaystyle\frac{1}{2}kl^2=\)\(2\)\(\mu'mgS+\frac{1}{2}kx^2\)

 

\(\displaystyle\frac{1}{2}kx^2=\frac{1}{2}kl^2-2\mu’mgS\)

 

\(kx^2=kl^2-4\mu'mgS\)

 

\(x^2=l^2-\displaystyle\frac{4\mu'mgS}{k}\)

 

\(x=\sqrt{l^2-\displaystyle\frac{4\mu'mgS}{k}}\)