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物基38 波の性質

 振動が次々と周囲に伝わっていく現象のことをといいます。よく、海岸のような場所で波が近づいたり遠のいたりするイメージと波が進むイメージを重ね合わせる人がいますが、海岸付近の波は「浅い水深における水面波の運動」という、特別な動きをする波の例なので、一般的な波とは少し違うわけです。

 

 一般的な波は、単に各点各点がその場にとどまったまま振動するだけで、実際に進んでいるわけではありません。例えば、音波をイメージしてみましょう。音を伝えているものは空気です。もし音源で音が鳴って、空気そのものが伝わって(移動して)しまうと、その間のスペースは真空になってしまいます。また、地震波が伝わってくるときも、震源地にある土地が地面ごと自分たちのいる所まで移動してくるわけではありません。あくまでも、各場所ごとで波を伝えるものが振動するだけで、移動しているわけではありませんね。

 

 このように、波を伝える媒介をするもののことを媒質といいます。また、音源や震源のように、波が発生する点をまとめて波源といいます。

 

波の要素

 では、波の各部分の名称を見てみましょう。

 

 波の振れ幅のことを振幅といい、Amplitude(振幅)の頭文字のAで表します。変位に相当するので、単位はメートルです。

 波は周期的に同じ形をくり返していますが、この波1回分の長さを波長といい、\(λ\)を使います。この文字は「ラムダ」と読みます。長さを英語でLengthと言いますが、この頭文字Lをギリシャ語で表したものが\(λ\)です。長さなので単位はメートルですね。

 そして、波のウネウネした形のうち、盛り上がっている部分のてっぺんを、下がっている部分の一番下をと言います。

 

 横軸がxの波のグラフが与えられたとき、その波が何の波を表しているのか、どちら向きに進んでいるのかが分からなくても、この4つの要素は見た瞬間に判別できる部分ですので、振幅A[m]、波長λ[m]、山、谷の値を求める問題では点数を落とせないですね。 

 

ちょっと中学の復習

 中学理科では、物理を学習するとき、力学よりも先に波を習っていると思います。中1の理科では、光、音、力、圧力、水圧、浮力、のような順番で習っていたと思います。このうち、音の分野でどんなことを習っていたかさかのぼって考えてみます。

 

 音は目には見えません。そこでオシロスコープを使って、音波を波形に直すことで音の特徴をとらえることにします。図はオシロスコープで測定した音波の図です。振幅が音量を表し、振動の回数が音の高さを表します。また、波の形から音の種類を決めることができます。これら3つを音の3要素と言っていました。

 

▼(復習)音の3要素

 音量 振幅で決まる

 音程 振動数で決まる

 音色 波形で決まる

 

 いま学習している波の分野と音波の分野は、細かくいうと別の分野の話です。図の横軸も、さっきは位置[m]だという話でしたが、音波の場合は時間[s]を表しています。このように波には2種類のグラフがあり、横軸が位置のグラフを「変位-位置グラフ」もしくは「y-xグラフ」と呼び、横軸が時間のグラフのことを「変位-時間グラフ」もしくは「y-tグラフ」と呼びます。

 

 そのあたりの細かい話は流すとして、中学のときに、オシロスコープのグラフを使ってどんな問題を解いていたかの復習をします。上の図で表している範囲の時間が0.060s間だったとします。波3つ分で0.060sということです。

 

このとき、

 (1)波が1回振動するのにかかる時間は何秒か

 (2)1秒間に波は何回振動するか

それぞれ求めてみましょう。

 

(1)

波3回分で0.060sなので、

\(0.060÷3=0.020s\)

 

(2)

3回:0.060s=x[回]:1s

と比を立てて計算すると

\(0.060x=3\)

\(x=\displaystyle\frac{3}{0.060}\)

\(x=50\)回

 

とすることができます。この計算は中1の少し難しめの問題として扱われているでしょうか。

 

周期と振動数

 ここで、さっきの(2)の問題ですが、解法に裏技があるんです。本来の計算方法であれば、上で計算したように比の計算をしなければいけませんが、波1回分で0.02秒です、というところまで分かっているなら、それを逆数にして、単に

 

\(\displaystyle\frac{1}{0.02}\)回

 

としてしまえば、解答終了です。中学の間に、そのワザを使いこなしている人がまれにいますが、教科書通りきれいに習った人はそんな方法を聞いたこともないかもしれませんね。

 

 この方法、実は高校では公式とされているんです。波1回分が振動するのにかかる時間を周期、1秒間に振動する回数を振動数と言います。それぞれ、周期は時間Timeの頭文字T、振動数はFrequencyの頭文字fを使って表します。

 

▼周期と振動数 

 周期T[s] 波が1回振動する時間

 振動数f[Hz] 波が1秒間に振動する回数

 

 これを利用して、さっきの比の計算を文字のまま行うと、

1回:T[s]=f[回]:1s より

 \(Tf=1\)

よって、Tを移項するなら

 \(f=\displaystyle\frac{1}{T}\)

fのほうを移項するなら

 \(T=\displaystyle\frac{1}{f}\)

 

つまり、Tとfが逆数関係になるのは必然的なことなので、そうであるなら最初から公式にしちゃいましょうよと、そういうことなんですね。

 

▼周期と振動数の関係

 \(Tf=1\)

 

 \(f=\displaystyle\frac{1}{T}\)

 

 \(T=\displaystyle\frac{1}{f}\)

 

最初の公式だけ知っていれば下2つは自分で計算できますので、覚える必要はないですね。教科書的には2本目の式を公式としているようですが、どれも一緒のことですから、好きなものを覚えてください。

 

波の基本式

 小学校以来、距離と速さ、時間の関係は

 

 \(\displaystyle\frac{き}{は|じ}\)

 

というものを使っていたと思います。これを高校からは文字に置き換えて

 

 \(\displaystyle\frac{x}{v|t}\)

 

として考えることにしていました。これと同じものを波の分野でも作ってみましょう。すると、距離に相当するものを波長λ、速さはそのまま同じv、時間に相当するものは周期Tとして書き換えると

 

 \(\displaystyle\frac{λ}{v|T}\)

 

となります。これが波バージョンの「き・は・じ」です。波分野では特に、\(\frac{1}{T}\)は\(f\)と同じ意味なので分数の公式を避けて表現することもできます。結果的に以下の式の形になり、これを波の基本式ということにします。

 

▼波の基本式

 \(v=\displaystyle\frac{λ}{t}=fλ\)