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物基10 v-tグラフ

\(v-t\)グラフ

 ここまでの話をすべて一つにまとめて、全体像を確認してみましょう。縦軸を速度\(v\)、横軸を時間\(t\)としたグラフを、\(v-t\)グラフと呼びます。

 

 このグラフが一つあれば、次のような物理量がすべて判断できますので、作問者側としてはとても都合がいいグラフです。

 

▼\(v-t\)グラフから分かること

 グラフの縦軸の値:速度

 グラフの傾き:加速度

 グラフの面積:変位

 

 例をあげてみましょう。図のように\(v-t\)グラフが与えられているとします。このとき、各部分のグラフの傾きと面積がどうなっているかをあらかじめ書き入れてみました。

 

 グラフの傾きを求める方法は、簡単に言ってしまえば、\(\displaystyle\frac{たて}{よこ}\)で求めることができます。

  面積の計算は大丈夫ですね。物理には高さをマイナスと解釈して計算されたときに出てくる、負の面積があることに気をつけてください。これは純粋に計算の産物です。マイナスの面積を持つ”物体”が現実世界にあるわけではありません。

 

 \(t=4s\)のとき、縦軸座標が\(0\)になることにも注意が必要です。この交点にあるとき、縦軸が\(0\)ですから、物体は動いていません。ですが傾きは\(-6\)なので、加速度が\(0\)になるわけではありません。

 ここは少しややこしいので、作問者はピンポイントで、\(v-t\)図の交点を出題することがよくあります。

 

 例えば、ボールを上に投げてみましょう。ボールを投げると、鉛直下向きに重力がかかりますね。重力も言ってしまえば加速度の一種です。ボールが空中にある間、ずっと重力は鉛直下向きの加速度を持っているはずです。途中で重力が消滅することはありえません。

 

 ところがボールの動きはどうでしょう。上に投げると、やがてターンして下に 落ちてきますが、最高点では一瞬だけ速度が\(0\)になりますね。この瞬間に重力は消滅しているのでしょうか。いいえ、違います。

 

 これが、速度が\(0\)で、加速度が何か値を持つ例です。少しはイメージできますか?

 

加速度に関する情報は、表に直して考える

 \(v-t\)グラフを読み取るとき、グラフのイメージがつかめないときには、表に直してしまいましょう。表に加速度という区分を作って、グラフの各区間の傾きを書き入れます。図の左側の列が、加速度の一覧です。

 

 また、グラフそのものが縦軸の上側にあるときは速度が正、つまり前に進んでいて、縦軸の下側にあるときは速度が負、つまり後ろ向きに進んでいることを示しますので、それを表の一番右に書き入れてみました。

 

 そしてややこしいのは真ん中です。

 \(0~2\)秒の区間は前に加速度\(3m/s^2\)で進んでいますので、運動のふるまいとしては素直に「加速」です。

 \(2~3\)秒の区間は加速度が\(0\)ですので、等速直線運動を行っています。なので、運動のふるまいは「等速」と書き入れておくことにしましょう。

 \(3~4\)秒の区間は加速度が負で、前に進んでいます。これは「減速」ということになります。

 \(4~5\)秒の区間がキーポイントです。加速度が負ですが、進行方向も後ろ向きになっていますので、このときは後ろ向きに加速していることを表しています。\(t=4s\)のときに一旦物体は停止していますので、Uターンして、いつのまにか後ろ向きの運動に切り替わっていますね。ここは狙われやすいポイントですので、十分気をつけて見ておきましょう。

 \(5~6\)秒の区間は加速度が\(0\)で後ろ向きに進んでいますので、後ろ向きに「等速」の運動をしていることになります。

 

 

距離に関する情報は、図に直して考える

 表で直すと、便利な部分もありますが、そうでない部分もあります。何秒後に結局のところは物体はどのあたりにいるんですか?という、距離に関することを考える場合には、素直にイラスト化してしまう方が分かりやすいです。

 

 グラフの面積計算をすると、最初の\(4\)秒間で\(15m\)だけ進みますので、ぐいっと\(15m\)進んだ図を描いてしまいます。で、ここが\(t=4s\)。

 

 その後、\(4~6\)秒の間で面積は\(-9m\)になっていますので、\(9m\)だけ戻った図をぐいっと描き足しましょう。\(15m\)のところから\(9m\)戻るので、最終的に\(t=6s\)の時には\(15-9=6m\)の点にいることになりますね。

 

 結論として、\(0~6s\)の間の移動距離は\(15+9=24m\)となり、最終的な\(t=6s\)における変位は\(6m\)となりました。