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物基 補1 有効数字

測定値と有効数字

 物理で扱う数字は、実際には何らかの実験器具や装置で測定して得た「測定値」です。当然、測定をすれば誰がどう測定しても、その大小は違えど必ず誤差が生まれます。

 なので、物理で使う数字の大半には「有効数字」と言って、おそらくここまでは正しいであろう、というケタが決まっています。

 

 大半、というのはどういうことかというと、物理で出てくる全ての数字に有効数字があるわけではありません。例えば、式中に登場してくる\(\pi\)には有効数字はなく、無限ケタまで正しいものと解釈しますし、半径を\(r\)としたときの直径\(2r\)の「\(2\)」は数学的なものなので、無限ケタまでぴったり\(2.0000000000…\)を意味します。

 

 ある長さの爪楊枝を手元の定規で測定してみると、\(65.1mm\)でした。定規の最小目盛りは1mmなので、最小目盛りの\(\frac{1}{10}\)の位、つまり\(0.1mm\)の位まで肉眼で頑張って読み取ります。

 

 このとき、最後の\(0.1mm\)は目分量で、感覚で決めていますので、もしかしたら正確には\(65.07mm\)かもしれませんし、\(65.12mm\)くらいかもしれません。

 

 人間が目分量で\(65.1mm\)としたとき、おそらく\(65.05~65.14999…mm\)くらいの幅の中に真の値があるだろうという意味になります。これを書き換えると\(65.1±0.05mm\)となります。

 

 なので、\(0.1mm\)の位までは測定したが、\(0.01mm\)の位からは感覚なので正確な数字ではない、ということになり、きちんと測定できた最初の3ケタ分を「有効数字」とします。

 

 小学校では、「上から○ケタの概数」と言っていたものに似ています。有効数字は概数の一つです。有効数字以下のケタは四捨五入されています。

 

 

▼有効数字の有無

 有効数字あり:測定される量(物理量) 例:\([m]、[kg]、[s]\)

 有効数字なし:数学の公式に表れる数 例:\(\pi\)、数学公式の2や\(\frac{1}{2}\)など

 

有効数字のケタ数

 いま見たように、\(65.1mm\)は有効数字3ケタです。

 

 \(6.51mm\)だとどうでしょう。これも、何らかの器具で\(0.01mm\)まできちんと測定したとみなして、有効数字3ケタです。

 

 \(0.651mm\)だとどうでしょう。これも実は有効数字3ケタです。この場合は最初の\(「0.」\)は「値」をもっていませんので、有効数字のケタ数のカウントには入れないルールがあります。

 

 \(0.0000000651mm\)でも有効数字3ケタです。0でない数字が表れるまでのケタ数は全てノーカウントとします。

 

 しっくりこないですか?単位を変えて考えてみましょう。

 \(65.1mm\)の爪楊枝は有効数字3ケタですね。単位を書き換えると、これは\(6.51cm\)の爪楊枝ですので有効数字3ケタです。

 さらに単位を書き換えると、\(0.0651m\)の爪楊枝ということになりますが、有効数字は5ケタでしょうか。単位を書き換えただけで実験がより詳細に行われたわけではありませんね。

 \(0.0000651km\)の爪楊枝も有効数字8ケタというわけではありません。単位を書き換えても、意味を持つのは「\(651\)」の部分だけです。

 なので、数字が表れるケタまでは無視してもいいんです。

 

 数字が表れた後は、逆にどれだけ長くても全てケタにカウントします

 \(100000g\)のような数字は有効数字6ケタと読み取ります。これの単位を書き換えるときは6ケタを崩さないように書き換えないといけませんので、\(1kg=1000g\)を使って書き換えると、\(100.000kg\)としてやらなければいけません。

 さらに、\(1t=1000kg\)を使えば、\(0.100000t\)となります。

 

 

▼有効数字のケタ数

 0でない数字が表れた後のケタ数全て

  例:65.1(3ケタ)、0.00651(3ケタ)、65100(5ケタ)

  「0.」はノーカウント、と覚えておけば十分です。

 

加算・減算の有効数字

 \(30cm\)の棒に\(6.51cm\)の爪楊枝を隙間なくぴったり取り付けました。このとき、全長はいくらでしょう。

 

 単純に考えて、\(30+6.51=36.51cm\)ですね。

 

 ところが物理では、そうはいかないんです。「\(30cm\)の棒」は\(30±0.5cm\)という意味を持ちます。

 そもそも棒の長さ\(30cm\)が雑な測定で行われており、\(mm\)レベルまで長さが分かっていません。そんな棒に\(6.51cm\)を付け足したら、急に\(0.01cm\)のケタまで正確に判明する、なんていうことはあり得ないわけです。

 

 \(30cm\)としている時点で\(0.1mm\)のケタはすでに四捨五入で消えてしまっていますので、\(36.51cm\)も四捨五入するケタを揃えなければいけませんね。

 よって、\(37cm\)として、これが正解。

 引き算も同様です。

 

 要は、最小のケタだけ見比べて、最小ケタが一番大きいものに全て合わせることになります。

 

 \(25cm-1.2cm+32.04cm\) だと 整数\(+\)小数1位\(+\)小数2位 なので、一番大きい整数に合わせます。

 

 \(0.03mm+12000mm-1.1mm\) だと 小数2位\(+\)整数\(+\)小数1位 なので、やはり整数に合わせます。

 

 

▼加減算の有効数字

 最小ケタが最大のものに合わせる

 

乗算・除算の有効数字

 縦\(12.3cm\)、横\(4.5cm\)の金属板の面積を計算することを考えます。

 単純に考えると \(12.3×4.5=55.35cm^2\) ですが、これも物理では、そうはいかないんです。

 しかも、さっきのようにケタ数をそろえて、\(55.4cm^2\)としても、これも違うんです。わけがわかりませんね。

 

 かけ算わり算のときには、たし算ひき算とは違うルールが効いてきます。

 

 \(12.3cm\)、\(4.5cm\)ともに、\(0.01cm\)のケタがすでに四捨五入されているものとみなします。実際には何らかの数字が存在しているはずなので、何らかの数字が存在しているとして筆算したものが、図になります。□を数字として計算してください。

 

 「何らかの数字」が関わる計算部分に色を付けてあります。計算自体は\(55.35\)が出ますが、「\(.35\)」の部分には四捨五入されて分からなくなった値をたし算して、はじめて正確な数字が出ます。

 

ということは、四捨五入された数字が何なのか分からない以上、「\(.35\)」の値も正確ではないわけです。

それなら四捨五入して消し去ってしまいましょう。

 

よって

 \(12.3×4.5=55.35≒55cm^2\)

となり、これが正解。

 

 いちいち筆算をしながら考えなくても大丈夫です。

 \(4.5\)□の3ケタ目の□が計算の最後まで引きずられて、解答の有効数字3ケタ目の部分も自動的に□がつくことになりますので、有効数字2ケタのものをかけ算したら答えも自動的に有効数字2ケタになるということです。

 

 つまり、たし算ひき算のときには「ケタ」そのものをそろえましたが、かけ算わり算のときは「ケタ数」をそろえることになります。

 この場合、有効数字3ケタ×有効数字2ケタ なので、ケタ数の小さい2ケタに揃えます。

 わり算も同様です。

 

 \(12cm×3.4cm÷56.7cm\) だと、2ケタ\(×\)2ケタ\(÷\)3ケタなので、ケタ数が一番小さい2ケタで答えます。

 

 \(1.2cm÷3cm×4.567cm\) だと、2ケタ\(÷\)1ケタ\(×\)4ケタなので、一番小さい1ケタで答えます。

 

 \(123cm×0.45cm÷0.67cm\) だと、3ケタ\(×\)2ケタ\(÷\)2ケタなので、2ケタです。「0.」は有効数字ノーカウントでした。

 

▼乗除算の有効数字

 最も小さい有効数字のケタに揃える