水平投射
小球を水平方向に初速度\(v_0\)で打ち出したとします。すると、小球は放物線を描きながら落下します。このような運動を「水平投射」と言います。
この水平投射の軌道について考えるとき、合成速度のときに登場した考えと同じく、縦方向と横方向をそれぞれ別々に考える、というワザを使います。
小球が打ち出されたあと、小球には重力のみがはたらきます。重力は鉛直下向きに加わりますので、鉛直下向きには加速しますが、それ以外の方向には加速しません。なので、水平方向の運動のみを考えると、「等速直線運動」をしています。
このとき、小球の速度は、最初から最後までずっと初速度\(v_0\)のままです。
一方で、打ち出した瞬間、小球は鉛直方向の速度はありませんので、鉛直方向には初速度\(0\)で「自由落下」していることと同じです。
このように、水平投射を扱うときには、軸を分解して、それぞれの軸の運動について、運動の振る舞いを考えてやると、複雑な軌道を単純にとらえることができるようになります。
▼水平投射
水平方向:等速直線運動として考える
鉛直方向:自由落下として考える
実際にどんな風に考えればいいのか、問題を解いてみましょう。
例題
高さ\(19.8m\)のビルの上から、小球を水平に初速度\(v_0=9.8m/s\)で打ち出した。\(g=9.8m/s^2\)とする。
(1) 打ち出してから地面に落下するまでの時間\(t[s]\)を求めよ。
(2) 落下するまでに小球が水平方向に飛んだ距離\(L[m]\)を求めよ。
(3) 落下する直前の小球の鉛直方向の速さ\(v_y[m/s]\)を求めよ。
(4) 落下する直前の小球の速さ\(v[m/s]\)を求めよ。
[解答]
(1)
落下に関わる問題は、鉛直方向のみの運動を考えます。つまり、自由落下の公式を使いましょう。
\(y=\displaystyle\frac{1}{2}gt^2\) より
\(19.8=\displaystyle\frac{1}{2}・9.8・t^2\)
\(t^2=4.0\)
\(t=2.0s\)
(2)
水平方向に関わる問題は、等速直線運動の問題として解きます。「距離=速さ×時間」ですね。
(1)で落下時間が分かっているので、それも使えます。初速度は\(v_0=9.8m/s\)ですね。
\(x=vt\) より
\(L=9.8×2.0\)
\(L=19.6\)
\(L≒20m\)
有効数字に注意!!
(3)
再び鉛直方向の問題。自由落下の公式を使います。
落下する直前、という言い回しは、落下した瞬間のことを指します。落下しきってしまうと小球が地面に当たって速さが変わってしまいますので、その直前という意味ですね。
\(v=gt\) より
\(v=9.8×2.0\)
\(v=19.6\)
\(v=20m/s\)
これも有効数字に注意!!
(4)
ここで初めて、縦横を融合した問題が出ました。こういう場合、たいていは三平方などでクリアできます。
落下する直前の小球の速さは、
(3)より、鉛直方向には\(v_y=19.6m/s\)
問題文より、水平方向には\(v_0=9.8m/s\)
ですので、作図すると\(2:1\)の関係になっています。
ここから三平方の定理を使えば、青矢印で示している小球の実際の速さの部分が\(\sqrt{5}\)の比となるので、水平方向の速さの成分から計算してやると、
\(v=9.8×\sqrt{5}\)
\(v≒9.8×2.24\)
\(v≒22m/s\)
と求めてやることが出来ます。
あとは、問題演習をしていく中で、細かい部分の詰めをしていきましょう。