単振り子
軽い糸の先におもりをつけて、おもりを左右に往復させるような運動のことを「単振り子」と言います。
この運動は、一般的な運動を説明しようと思えば、非等速円運動の話になりますが、往復の幅が極端に小さいときに限れば、ほぼ直線上を運動していると解釈できるので、水平ばね振り子と同じように、単振動の公式が使えるのではないか、という話を扱う分野です。
だいたい角度にして20°くらいまでなら直線とみなして単振動と考えても、実験値が理論立てて説明できますので、小さい往復幅、というのは、そのくらいの範囲の運動だと思ってください。
とりあえず、重力を作図して、分解してみましょうか。
図のようになりますね。このうち、振り子を中心に戻そうとする分の力が \(mgsin\theta\) ですので、これが復元力として働きます。
往復運動が、ほぼ直線上で行われますので、\(x\)軸を考えて、おもりの最下点を原点とします。いま図のようにおもりが右にずれていますので、位置\(x\)の点に物体があると考えます。
運動方程式を立てると、右向きを正として、
\(ma=-mgsin\theta\)
\(-m\omega^2 x=-mgsin\theta\)
\(\omega^2 x =gsin\theta\)
となります。ここまでの式変形はあまり悩まずに進められそうです。
ですが、ここで手詰まりですね。これ以上の変形はできませんので、何らかの対策をする必要が出てきます。
ほぼ直線上なので、図もいっそのこと直線上にしてしまいましょうか。この方が見やすいですね。右向きを正として、左向きの\(mgsin\theta\)にも、マイナスをつけて表記することにしました。
そして、すぐには納得できないかもしれませんが、\(\theta\)がとても小さいので、図の斜辺の長さと、最下点までの長さは等しいと近似することにします。
この図だと\(\theta=30°\)くらいありそうなので、見た目では納得しがたいですが、\(\theta=1°\)くらいで作図をすると納得できるでしょう。
\(\theta\)が十分小さいとき、物理でよく使う近似として、\(sin\theta≒tan\theta\) というワザがあります。
▼\(\theta <<1\)のときの(一次)近似
\(sin\theta≒tan\theta≒\theta\)
これを使うと、
\(\omega^2 x ≒ g tan\theta\)
\(\omega^2 x = g \displaystyle\frac{x}{l}\)
\(\omega^2 = \displaystyle\frac{g}{l}\)
\(\omega=\displaystyle\sqrt{\frac{g}{l}}\)
と変形できるので、角振動数を求めることができますね。
一次近似
近似をするときに、勢い余って、\(sin\theta≒0\)としてしまう人がたまにいます。確かに\(\theta\)がほぼ\(0\)なら、一見すると正しそうな気もしますが、これは数字で言えば、\(sin30°=0.5≒1\)、\(sin29°=0.48≒0\)、とするくらいの豪快な近似なので、物理現象としては何もかも消えてなくなります。ちょっと近似するには雑すぎる扱いですね。
「近似」というと難しい数学をやっているような気がしますが、要は、小数何ケタ目で四捨五入することにするか、ということなので、雑な近似もあれば精密な近似もあります。
専門的にはテイラー展開、とか、マクローリン展開、とか言われる数学的なワザを使いますが、ここではその展開の中でも「一次近似」と言われる精度の近似を行っています。もっと小さいケタで四捨五入するときは「二次近似」「三次近似」と深めていくこともできます。
直接一対一の関係ではありませんが、一次近似、二次近似というのは、小数第1位まで近似、第2位まで近似、という感覚に近いですね。\(sin\theta\)を整数で近似したらさすがにダメですね。
単振り子の周期
あとはいつもの流れです。
\(T=\displaystyle\frac{2\pi}{\omega}\) より
\(T=2\pi \displaystyle\sqrt{\frac{l}{g}}\)
以上。
▼単振り子公式
角振動数
\(\omega =\displaystyle\sqrt{\frac{g}{l}}\)
周期
\(T=2\pi \displaystyle\sqrt{\frac{l}{g}}\)