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Atwoodという人物像

 イギリスの数学者\(George Atwood\)(アトウッド)はケンブリッジ大学の教授で、とても人気だったそうです。ふつう、大学の教授陣が教鞭をとるときには、文字と数式で淡々と内容を伝えていき、しかも彼らは「教育者」ではなく「研究者」ですから、とうてい分かりやすさとは程遠い講義をする人もいるわけです。アインシュタインに至っては、黒板の方を向いて小さな声でボソボソとしゃべるだけの難解な授業で、学生からはとても不評だったそうです。

 そんな中、キャベンディッシュの講義は、デモンストレーションを多く取り組んだ「魅せる」講義であって、学生からの人気はとても高かったようです。

 基本的な力学実験はもちろんのこと、静水圧、滑車、振り子、エアポンプ、電気、磁気、光学、そしてレオンハルト・オイラーの色消しレンズの原理まで示したそうです。

 アトウッドの教え子には、その後大成し、英国首相となったウィリアム・ピットもいます。

 

 このアトウッドですが、「A Treatise on the Rectilinear Motion and Rotation of Bodies」という、ニュートン力学の、力積と単振動に関する教科書を書いたことが最も著名な記録のようです。私は知りませんでしたが。

 この教科書を書くためだったのかどうかは定かではありませんが、この本が出版されている1784年、\(Newton\)の第2法則を検証するために、アトウッドは一定の加速度を作り出せる装置を開発しています。

 当時、ストップウォッチなどという文明の利器はまだ存在せず、短い間隔で時間を測定することは困難であったため、重力加速度の大きさを精密に測定することは困難でした。ところが簡単な滑車の装置を使うと、一定の加速度で、それも重力加速度ほど大きい値ではない加速度を、いともたやすい設定変更で調整が可能となるわけです。

 これは当時、大変に精密な実験器具として重宝され、さまざまな研究機関や教育機関で利用されたといわれています。

 

 初めて電池を開発した\(Volta\)は、このアトウッドの器械を見たとき、あまりの精密さに感動し、実験とはもっと緻密に精密に測定されるべきだ、と意気込んだことによって電池の開発につながったとされています。

 

 1798年、\(Cavendish\)(キャベンディッシュ)が、まったく別の方法で厳密な重力加速度を求めたのちは測定装置としての役割を終えましたが、エレベーターの原理に利用されるなど、現代においてもアトウッドが開発した機械の知恵は利用され続けています。

 

 

 

参考:George Atwood (1745 - 1807) - Biography(英文)