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万有引力7 宇宙速度

第一宇宙速度

 地球の表面すれすれの円軌道を回るための速度第一宇宙速度といいます。表面すれすれ、というと、どのくらいの高さを想像しますか?

 

▼すれすれを回っても何ともぶつからないのか

 地球は自転しているため完全な球形ではなく、赤道付近が少し膨らんでいます。北極や南極の方向への半径(極半径)は\(6357km\)、赤道の方向への半径(赤道半径)は\(6378km\)です。

 通常、物理では、これらの地球の半径を有効数字2ケタ分だけ使いますので、どちらも四捨五入されて\(6400km\)として扱いますよね。なので、ここでいう「表面すれすれ」は、赤道周囲でも\(22km\)、極付近なら\(43km\)近く上空のことを示すことになりますので、まぁ地表のありとあらゆるものはぶつからずに済みますね。それがたとえ標高\(8.9km\)のエベレストであったとしてもです。

 

 

▼第一宇宙速度を求める

円軌道ですので、円運動方程式を解く問題に区分されます。

万有引力を受けて円運動するときの円運動方程式は、

 

 \(m\displaystyle\frac{v^2}{R}=G\frac{Mm}{R^2}\)

 

 \(v^2=\displaystyle\frac{GM}{R}\)

 

ここで、\(GM=gR^2\)より

 

 \(v^2=\displaystyle\frac{gR^2}{R}\)

 

 \(v^2=gR\)

 

 \(v=\sqrt{gR}\)

 

となります。

 

 

▼復習(\(GM=gR^2\))

 地表付近での重力の表現方法は2パターンあります。そのまま\(mg\)と表す方法と、万有引力で表す方法です。

どちらも値は同じでなければいけませんので、

 

 \(mg=G\displaystyle\frac{Mm}{R^2}\)

 

 \(g=\displaystyle\frac{GM}{R^2}\)

 

よって

 

 \(gR^2=GM\)

 

 

▼第一宇宙速度の値を知る

 \(v=\sqrt{gR}\)

において、\(g≒9.8m/s^2\)、\(R=6400km\)を代入すると、\(R=6.4×10^3km=6.4×10^6m\)なので、

  \(=\sqrt{9.8×6.4×10^6}\)

  \(=\sqrt{98×64×10^4}\)

  \(=\sqrt{2×49×64×10^4}\)

  \(=\sqrt{2}×7×8×10^2\)

  \(=79.195×10^2\)

 \(v=7.9×10^3m/s\)

 \(v=7.9km/s\)

 

 

▼第一宇宙速度

 \(v=\sqrt{gR}=7.9km/s\)

 

 

ここでの計算では有効数字3ケタ目まで考慮すると\(7.92km/s\)ですが、そもそも地球半径を本来より大きめに見積もっているので、実際には少し小さい\(7.91km/s\)になるはずです。教科書は\(7.91km/s\)で紹介していますね。

 

ちなみに\(g=9.8m/s^2\)として、

 \(R=6378km\)で\(v=7.906km/s\)、

 \(R=6357km\)で\(v=7.893km/s\)

になりましたよ。

 

 

仮に教科書通り、\(v=7.910km/s\)とすると、軌道半径は\(R=6385km\)となりました。

 

地表すれすれってのは、有効数字3桁の範囲であれば、どうやら\(R=6385km\)あたりのようですね。

赤道上空なら高度\(7km\)、極上空なら高度\(28km\)くらいでしょうか。

 

第二宇宙速度

 地球重力からの脱出速度第二宇宙速度といいます。

 

▼第二宇宙速度を求める

第二宇宙速度は、地表の物体を無限遠まで持ち上げるときの最小初速度ですので、円運動方程式ではなく力学的エネルギー保存則を使います

 

地表での力学的エネルギーは

 [運動エネルギー] \(K=\displaystyle\frac{1}{2}mv^2\)

 [位置エネルギー] \(U=-G\displaystyle\frac{Mm}{R}\)

 

無限遠での力学的エネルギーは

 [運動エネルギー] \(K=0\):動いていない

 [位置エネルギー] \(U=0\):基準面なので\(0\)

 

よって、

 \(\displaystyle\frac{1}{2}mv^2-G\displaystyle\frac{Mm}{R}=0\)

 

 \(\displaystyle\frac{1}{2}v^2-\frac{GM}{R}=0\)

 

 \(\displaystyle\frac{1}{2}v^2=\frac{GM}{R}\)

 

 \(v^2=\displaystyle\frac{2GM}{R}\)

 

\(GM=gR^2\)を代入して

 

 \(v^2=\displaystyle\frac{2gR^2}{R}\)

 

 \(v^2=2gR\)

 

 \(v=\sqrt{2gR}\)

 

となります。

 

 

▼第二宇宙速度の値を知る

 \(v=\sqrt{2gR}\)

において、\(g≒9.8m/s^2\)、\(R=6400km\)を代入すると、\(R=6.4×10^3km=6.4×10^6m\)なので、

  \(=\sqrt{2×9.8×6.4×10^6}\)

  \(=\sqrt{2×98×64×10^4}\)

  \(=\sqrt{4×49×64×10^4}\)

  \(=2×7×8×10^2\)

  \(=112×10^2\)

 \(v=11.2×10^3m/s\)

 \(v=11.2km/s\)

 

 

▼第二宇宙速度

 \(v=\sqrt{2gR}=11.2km/s\)

 

こっちの方が計算が簡単ですね。

 

第\(n\)宇宙速度

他にもいろいろありますよ。テストや入試では見かけることはまずないですが、興味がある人はいろいろ調べてみるといいですね。いずれも第二宇宙速度と同じ計算方法で求めます。準公式\(GM=gR^2\)は使えないので、その手前の\(v^2=\displaystyle\frac{2GM}{R}\)に代入すればいいですね。

 

第三宇宙速度:太陽系からの脱出速度

 約\(30km/s\)。\(R\)を地球から太陽の距離\(1.496\)億\(km\)にして、\(M\)は太陽質量\(1.989×10^{30}kg\)にする。

 

第四宇宙速度:太陽系の位置における銀河系脱出速度

 約\(300km/s\)。太陽系は銀河系の中心から約2.8万光年ですが、銀河系の質量ってどうやって見積もっているんでしょうね。

 

第五宇宙速度:銀河集団からの脱出速度

 約\(1000km/s\)。どの銀河までを銀河集団に含むんでしょうか。

 

第六宇宙速度:宇宙からの脱出速度

 約\(30\)万\(km/s\)。光速でないと脱出できないようです。そもそも宇宙に「外」ってあるんでしょうかね。