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物基42 音波

音の性質

まず初めに、音に関する用語をまとめて確認することにしましょう。

 

音源

 音を発生させる物体を音源と言います。光なら光源、電気なら電源、地震なら震源、などの用語のシリーズと同じく、音が出てくる物体は音源と呼ぶことにします。ただ、他の用語と違って、音源は「発音体」ということもあります。

 

音の直進

 音は一般的には真っすぐ進むと考えます。この現象を音の直進と言います。雷が光って、雷鳴が聞こえたとき、音が真っすぐ進んできたとして考えますね。そういうときに前提として考えられている現象です。

 

音の屈折

 音は光と同じように、屈折します。あとで学びますが、音は空気の振動ですので、高温になると空気の熱運動がさかんになり、その影響で音も早く伝わります。気温が低くなると音は遅く進みます。その影響で音が進む方向が変化するときがありますが、それを音の屈折と言います。

 夏場のグラウンドで遠くにいる友達に声をかけても声がとどかなかったり、体育祭のときの招集の放送が聞こえにくかったりするときがあります。これは周りがうるさいのも一つの原因ではあるでしょうが、実は、温められた空気が上昇していくのと同じように、地表が暑いときには音も上空に浮き上がってしまうんです。

 逆に、夜中に遠くで犬が鳴いていたり、電車が走っている音が聞こえたりしますが、これは逆に地表が比較的冷たいので、音が下に降りてくることで、遠くの音が聞こえるわけです。昼間には犬が鳴いていないというわけでも、電車が走っていないというわけでもないですよね。こういった現象を、音の屈折と言います。

 

音の反射

 音は空気の振動なので、空気の粒という実体が存在します。なので、空気の粒を壁にぶつけるとはね返りますから、音も当然はね返ることになります。これを音の反射と言います。反射するのには、かたい面の方がしっかり反射させることができますので、カーテンのようにフワフワしたものに音を浴びせかけてもあまり反射しませんが、木の板のようなものに音を鳴らすと、しっかり音がはね返ってきます。

 

音の回折

 「回折」という用語は高校で初登場ですね。「かいせつ」とよみます。音は直進すると言いましたが、実際どうでしょうか。壁や塀の後ろで誰かが会話をしていると、声がしているのが聞こえますよね。もし音が直進するだけなのであれば、壁の裏のかげになっているところにいる人には絶対に音は聞こえないはずです。ですがみなさんは経験則から、壁の裏でも音が聞こえるのを知っています。これは、音が曲がって伝わることに他ならないわけです。

 このような、音が障壁を回り込んで伝わる現象のことを音の回折(かいせつ)といいます。

 

音の干渉

 教室で英語のリスニングテストをすることにします。音声は教室の前の左右にあるスピーカーから出てくるとします。このとき、教室のど真ん中一直線上の縦列の人は、左右のスピーカーからの音をダブルで聞くことになるため、大きい音が聞こえてきます。ところが、音は波ですから、山と谷があります。なので、教室のど真ん中から少し横にそれると、左のスピーカーからの音は山が届き、右のスピーカーからの音は谷が届いてしまうことで、音が小さくなってしまうゾーンもあるはずです。

 それがどのくらいの音の小ささになるのか、もしくは教室の真ん中の縦列からどのくらい横にずれた位置になるのかは分かりませんが、スピーカーが2つあると、スピーカー1つのときと比べて、余分に音が聞こえたり、逆に聞こえにくくなったりします。

 こういった現象のことを、音の干渉といいます。音源が2つある、という問題文に出会ったら、間違いなく音が干渉していることになりますね。

 

音の三要素

 人間が音を聞くときに、どんな音なのかを認識します。そのとき、音のどんな特徴で人間は音をとらえているのでしょう。

 まず一つは、音量です。音量は、音を波形にした時の振幅で表されます。振幅が大きいと、大きい音だということになります。

 次に、音程です。音が高いか低いかは、音を波形にしたときには、\(1s\)間にどのくらい波が上下したかという振動数で表されます。振動数が多いと、高い音を意味します。

 そして最後に、音色です。全く同じ高さ、同じ大きさの音を鳴らしても、人間の耳は優秀ですから、それが人の声なのか楽器なのか、もしくは機械音なのかを判定することができます。もっと言えば、同じ人の声を聞くにしても、ちょっと鼻声だとすぐに気づきます。これをコンピューターで分析しようとすると、なかなか難しいですが、人間の耳はいとも簡単に聞き分けることができますね。音色は、音を波形で表したときの、波の形に相当します。

 

▼音の三要素

 音量:振幅で特徴づけられる

 音程:振動数で特徴づけられる

 音色:波形で特徴づけられる

 

可聴域と超音波

 人間の耳はかなり精密ですが、万能ではありません。聞き取れる音の範囲が決まっています。この範囲のことを可聴域といい、だいたい\(20~20000Hz\)くらいの範囲です。

 

 \(20Hz\)というと、太鼓や花火の音だったり、暖房をつけたときにエアコンの奥の方から聞こえる低いゴーっとした音だったりのイメージです。学校で行われる聴力検査のピー音が、\(1000~4000Hz\)くらいで、\(8000Hz\)くらいになると、かなり高いキーンという音になります。

 

 \(12000Hz\)くらいになると、いわゆるモスキート音(「モスキー・トーン」と勘違いしている人、違いますよ!!)と言われるような音になりますので、高校生くらいでも聞こえない人は聞こえないです。テレビの裏に行ってみるとキーンとした音が鳴っていることがありますが、そんな音ですね。

 

 高校生くらいだと、\(17000~18000Hz\)くらいなら平然と聞こえる人も多いですが、ヘッドホン難聴という言葉があって、毎日大音量の音楽なりをヘッドホンやイヤホンで聞いている習慣がある人は、高校生でも\(8000Hz\)くらいの音はすでに聞こえにくくなっている人もいるようです。要注意ですね。

 

 \(20000Hz\)を超えると、可聴域を超えて、超音波と言われるゾーンになります。イルカやコウモリが、この超音波を使って会話をしたり獲物をとらえたりしています。イルカのキュイキュイという高くてかわいらしい声は、人間が聞こえるということは、イルカにとっては、これ以上にない低い低いデスボイスなのかもしれませんね。

 

音速

 音の速さは、中学理科では約\(340m/s\)だと習っている人が多いと思います。ところが、高校入試の過去問をあさっていると、\(330m/s\)としていたり、\(350m/s\)としていたり、まちまちの数字になっています。これは、入試作問者が音速を間違えているのでしょうか。いやいや、そんなことはありませんね。

 

 最初に、音の性質のところでも話したように、音は空気の振動によるものなので、高温で空気の熱運動が激しくなると、音そのものの速さも速くなるという性質があります。

 

 そして、その音速\(V\)は、常温付近に限定すれば

  \(V=331.5+0.6T\)

と近似して表すことができます。ここで\(T\)は\(℃\)基準で表した温度です。

 

 たとえば、\(0℃\)のときの音速であれば、

  \(331.5+0.6×0=331.5m/s\)

となり、\(10℃\)のときの音速であれば、

  \(331.5+0.6×10=331.5+6=337.5m/s\)

となります。

 

 あまり問題を解くのに影響はありませんが、一応伝えておくと、この式は常温付近で成立しているだけの近似式です。絶対零度\((-273℃)\)だと、熱運動は\(0\)ですから、理論上、音速も\(0m/s\)になります。そういったことは上の式では説明できません。

 \(V=20.1\sqrt{T}\) (\(T\)はケルビン単位の温度\([K]\))

という、もう少し正確な式もありますが、高校では使いません。興味がある人は知っていても面白いかもしれませんね。

 

▼音速

 \(V=331.5+0.6T\)

  \(V[m/s]\):音速

  \(T[℃]\):気温