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リ物 応143

(1)

波の基本式です。公式一発で

 \(\lambda=vT [m]\)

 

この式は、波バージョンの「距離=速さ×時間」という式です。

 

 

(2)(イ)

この問題で一番理解しにくいのは、波が進んでいく様子をイメージできないことです。ですが、波の大きさや振幅、波の位相のどの点を指すかなどの情報をすべて無視して、波のある一点がどう進んでいるかだけをイメージすれば解ける問題ですので、点\(P\)を小球と見なしてしまってもイメージするのには問題ありません。

 

点\(P\)という小球が速度\(v\)で点\(O\)から壁に進み、壁ではね返って戻ってくるイメージです。しかも壁で波は同位相で反射することにされていますので、波の反射によって位相がどうずれるかすらも深く考えなくてよくなります。波の山が当たって山がはね返る。これを、小球が当たって小球がはね返るイメージにしてしまうわけです。

 

さて、この実験では、時刻\(t=0\)の時点で原点では波が振動しています。ところが\(t=0\)のときに点\(P\)ではまだ何も振動がありません。波が伝わってくるまでは待機状態です。

 

この、原点で発生した波が点\(P\)まで到達するまでの時間がどのくらいかを計算しようと思ったら、単に原点から出た波がどのくらいの時間をかけて\(x\)だけ進むかを考えればいいことになります。

 

よって、遅れの時間を\(t_0\)とすれば、

 \(t_0=\displaystyle\frac{x}{v} [s]\)

 

 

(2)(ウ)

原点で振動が始まった瞬間、原点に設置したストップウォッチを動かしたとします。その時間を\(t[s]\)とします。

また、点\(P\)にも別のストップウォッチを設置しておいて、点\(P\)の振動が始まってから時間を\(t_p[s]\)として記録することにします。

 

仮に、原点で振動が始まってから、\(2\)秒遅れで点\(P\)の振動が始まったとします。すると、それぞれのストップウォッチの記録は表のようになります。 

 \(t[s]\)  \(0\)   \(1\)   \(2\)   \(3\)   \(4\)   \(5\) 
 \(t_p[s]\) \(0\) \(0\) \(0\) \(1\) \(2\) \(3\)

原点のストップウォッチが\(t[s]=0,1,2…\)と続く間、点\(P\)のストップウォッチは動いておらず、原点のストップウォッチが\(t[s]=2,3,4…\)と刻むようになってようやく点\(P\)のストップウォッチも動き始めていることを表している表のつもりです。 

 

これを使って、原点の波の式を書くと、

 \(y=Asin\displaystyle\frac{2\pi}{T}t\)

同様に点\(P\)での波の式を書くと、

 \(y_p=Asin\displaystyle\frac{2\pi}{T}t_p\)

となります。

 

この\(t_p\)を\(t\)で表そうとすれば、\(2\)秒遅れですので、

 \(t_p=t-2\)

としてやって

 \(y_p=Asin\displaystyle\frac{2\pi}{T}(t-2)\)

となりますね。

この考え方が、一般の位置における正弦波の式の導出の考え方です。

 

話を戻しましょう。今、点\(P\)では、原点よりも\(t_0\)だけ遅れて振動が始まりますので、式の形は

 \(y_1=Asin\displaystyle\frac{2\pi}{T}(t-t_0)\)

となります。その\(t_0\)に(イ)で求めた値を代入すると、(ウ)の答えは、

 \(y_1=Asin\displaystyle\frac{2\pi}{T}(t-\frac{x}{v}) [m]\)

となります。

 

 

(3)(エ)(オ)

原点\(O\)から点\(P\)までの遅れの時間\(t_0\)は、\(OP\)間が\(x\)だったので、

 \(t_0=\displaystyle\frac{x}{v}\)

と書くことができました。

 

今度は、原点\(O\)から壁まで進んで、反射して返ってきて点\(P\)までに来るための時間が、遅れの時間に相当します。

\(O→L→P\)までの距離が\(2L-x\)で表せます。\(OL+LP\)で出してもいいですが、\(OL\)の往復から\(x\)を引く方が早く求まります。

 

この距離を速さ\(v\)で進むので、遅れの時間は\(\displaystyle\frac{2L-x}{v}\)となります。

よって、前問の\(x\)の部分だけ書き換えてやって、

 \(y_2=Asin\displaystyle\frac{2\pi}{T}(t-\frac{2L-x}{v}) [m]\)

 

 

(4)

ここまでで求めた\(y_1\)と\(y_2\)を足し合わせましょう。波を足し合わせることを、波の重ね合わせ、もしくは波の合成といいます。

 \(y=y_1+y_2\)

 

  \(=Asin\displaystyle\frac{2\pi}{T}(t-\frac{x}{v}) + Asin\frac{2\pi}{T}(t-\frac{2L-x}{v})\)

 

  \(=2Asin\displaystyle\frac{2\pi}{T}\frac{(t-\frac{x}{v})+(t-\frac{2L-x}{v})}{2}・cos\frac{2\pi}{T}\frac{(t-\frac{x}{v})-(t-\frac{2L-x}{v})}{2}\)

 

  \(=2Asin\displaystyle\frac{2\pi}{T}\frac{2t-\frac{2L}{v}}{2}・cos\frac{2\pi}{T}\frac{\frac{2L}{v}-\frac{2x}{v}}{2}\)

 

  \(=2Asin\displaystyle\frac{2\pi}{T}(t-\frac{L}{v})・cos\frac{2\pi}{T}(\frac{L-x}{v}) [m]\)

 

 

(5)

(4)より、\(sin\)●の式は時間\(t\)とともに値が変わる部分で、\(cos\)●の式は時間\(t\)が変化しても一定の値となる部分だということに気付きます。

 

そこで、\(cos\)●の部分が\(0\)であれば、時間が変化しても\(y=0\)となるので、\(cos\)●の部分だけを計算することにしましょう。

 

 \(cos\displaystyle\frac{2\pi}{T}(\frac{L-x}{v})=0\)

 

 \(\displaystyle\frac{2\pi}{T}(\frac{L-x}{v})=\frac{\pi}{2},\frac{3}{2}\pi,\frac{5}{2}\pi…\)

 

整数\(m\)を用いて

 

 \(\displaystyle\frac{2\pi}{T}(\frac{L-x}{v})=(m+\frac{1}{2})\pi\)

 

\(\pi\)を割って、左辺の\(v\)だけカッコの外に出しておきます

 

 \(\displaystyle\frac{2}{vT}(L-x)=(m+\frac{1}{2})\)

 

(1)の\(vT=\lambda\)と、問題文にある\(L=\lambda\)を適用すると

 

 \(\displaystyle\frac{2}{\lambda}(\lambda-x)=\frac{2m+1}{2}\)

 

 \(\lambda-x=\displaystyle\frac{2m+1}{4}\lambda\)

 

 \(x=\lambda-\displaystyle\frac{2m+1}{4}\lambda\)

 

 \(x=\displaystyle\frac{3-2m}{4}\lambda\)

 

\(x\)は原点から\(L\)の範囲内になければいけないので、その範囲を満たす整数\(m\)を\(0,1,2…\)と数え上げていくと、

 

 \(m=0\) のとき、\(x=\displaystyle\frac{3}{4}\lambda\)

 

 \(m=1\) のとき、\(x=\displaystyle\frac{1}{4}\lambda\)

 

 \(m=2\) のとき、\(x<0\)となり解なし。

 

なので、時間によらず変位しない点は\(2\)点あり、そのうち原点に近い方の点は\(x=\displaystyle\frac{1}{4}L [m]\)だということになりました。