■文字を置く
まず時間に関して、最初に落下する時間が\(t_1\)に設定されていますので、1回目の衝突後、最高点に達するまでの時間を\(t_2\)、そこから2回目の衝突までに要する時間は、運動の対称性により同じく\(t_2\)。2回目の衝突後は同様に\(t_3\)、と置いておきます。
速度に関しては、(3)で、\(n\)回目の衝突をした直後の鉛直方向の速度を\(v_{yn}\)と置いていますので、そのまま1回目、2回目、3回目…と置くことにしました。最初の衝突直前の速度は、0回目衝突としてカウントしています。また、速さではなく速度なので、跳ね上がるときはマイナスになりますね。
高さに関しては、1回目の衝突後の最高点\(H\)しか登場しませんので、そこだけ\(H\)を書くだけにしておきます。
時間に関する添え字だけ、速度に関する添え字や衝突の回数とつけ方が違うのが気持ち悪いですが、出典元の京都府大の問題を確認したところ、元々の設定からこうなっていましたので、あきらめます。
本当だったら時間に関しては\(t_0\)、\(t_1\)、\(t_2\)と置きたいところですが…。
(1)
高さ\(h[m]\)だけ自由落下しているとして、
\(h=\displaystyle\frac{1}{2}gt_1^2\) より
\(t_1^2=\displaystyle\frac{2h}{g}\)
\(=\displaystyle\sqrt{\frac{2h}{g}} [s]\)
(2)
初速度の鉛直成分が\(0\)のとき、床との衝突前後の高さには\(h'=e^2h\)の関係があります。
\(h'=e^2h\) より
\(H=e^2h [m]\)
(3)
1回目の衝突直前の小球の速さ\(v_{y0}\)は、(1)で落下に要する時間が求まっているので、
\(v=gt\) より
\(v_{y0}=g×\displaystyle\sqrt{\frac{2h}{g}}\)
\(=\sqrt{2gh} [m/s]\)
1回目の衝突直後の速さ(速度ではない)は、衝突直前の速さの\(e\)倍になります。なので、
\(v_{y1}=ev_{y0}\)
2回目の衝突直後の速さは、さらに\(e\)倍されて、
\(v_{y2}=ev_{y1}=e^2v_{y0}\)
3回目の衝突直後の速さは、
\(v_{y3}=e^3v_{y0}\)
4回目の衝突直後の速さは、
\(v_{y4}=e^4v_{y0}\)
よって、\(n\)回目の衝突直後の速さは、
\(v_{yn}=e^nv_{y0}\)
\(v_{yn}=e^n\sqrt{2gh} [m/s]\)
となります。速度に直すと、衝突直後の速度はすべて鉛直上向きになるため、マイナスをつけて、
\(v_{yn}=-e^n\sqrt{2gh} [m/s]\)
となって、これが解答です。
これは式で追う、というよりも推測していく方が早く正確に求まると思います。
(4)
1回目の衝突までの時間が\(t_1\)でした。1回目の衝突直後から最高点までに要する時間\(t_2\)は、元の落下時間の\(e\)倍になるので、
\(t_2=et_1\)
です。同様に、2回目の衝突直後から最高点まで要する時間\(t_3\)は、
\(t_3=et_2=e^2t_1\)
となります。以下同様に、
\(t_4=e^3t_1\)、\(t_5=e^4t_1\)…と続きます。
\(t\)の添え字が気持ち悪いので、その部分に目をつむって、出てきた式だけに注目すると、衝突後に最高点まで要する時間は、
1回目の衝突後、\(et_1\)
2回目の衝突後、\(e^2t_1\)
3回目の衝突後、\(e^3t_1\)
4回目の衝突後、\(e^4t_1\)
となり、\(e\)の指数部分が衝突回数と一致して、見やすくなります。
なので、\(n\)回目の衝突後、最高点まで要する時間は\(e^nt_1\)、運動の対称性から、最高点から地面に戻るまでの時間も同じく\(e^nt_1\)。
つまり、\(n\)回目の衝突後から、\(n+1\)回目の衝突直前までに要する時間\(T_n\)は
\(T_n=2e^nt_1\)
\(T_n=2e^n\displaystyle\sqrt{\frac{2h}{g}} [s]\)
(5)
(4)で求めた時間の総和を求めてみましょう。その時間を\(T\)とすることにします。
\(T=t_1 + 2et_1 + 2e^2t_1 + 2e^3t_1 +…\)
\(=t_1 + 2et_1(1+e+e^2+e^3+…)\)
ここで、
\(a+ar+ar^2+…=\displaystyle\frac{a(1-r^n)}{1-r}\)
において、\(a=1\)、\(r=e\)とすると、
\(1+e+e^2+…=\displaystyle\frac{1-e^n}{1-e}\)
となりますが、\(n\)が十分大きいと考えると、\(e^n=0\)と近似がききます。これはきちんとした方法は数Ⅲの極限で習いますが、今の時点はその式の表現方法には数学のような正確さを求めなくて構いませんので、\(n\)が十分大きいとき、
\(1+e+e^2+…=\displaystyle\frac{1}{1-e}\)
が成り立つというところまで理解をしましょう。
よって、
\(T=t_1 + 2et_1(1+e+e^2+e^3+…)\)
\(=t_1+2et_1・\displaystyle\frac{1}{1-e}\)
\(=t_1\left( 1+\displaystyle\frac{2e}{1-e}\right)\)
\(=\left( \displaystyle\frac{1-e}{1-e}+\frac{2e}{1-e} \right)t_1\)
\(=\displaystyle\frac{1+e}{1-e}t_1\)
\(=\displaystyle\frac{1+e}{1-e}\sqrt{\frac{2h}{g}}\)
この時間が経過すると、衝突の繰り返しが終わり、床の上を滑り始めますので、あとは等速運動の公式を使って、
\(L=v_0T\) より
\(L=v_0\displaystyle\frac{1+e}{1-e}\sqrt{\frac{2h}{g}} [m]\)
となります。