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リ物基 基例26

\(mks\)単位系と\(cgs\)単位系の混在問題です。

物理では通常、比較的大きいものを扱いますので、単位には\([m],[kg],[s]\)を基本として使います。これらの単位の頭文字を並べて\(mks\)単位系といいます。

 

一方で化学では、物理と比較すると、粉末の薬品のような小さくて軽いものを扱うことが多いですので、単位系には\([cm],[g],[s]\)を基本として使います。これを同じように、\(cgs\)単位系といいます。

 

 

■\(mks\)単位系

 \([m],[kg],[s]\)を基本とした単位の組み合わせ。

 物理ではこちらを主に使う。

 

■\(cgs\)単位系

 \([cm],[g],[s]\)を基本とした単位の組み合わせ。

 化学ではこちらを主に使う。

 

 

今回、この物理基礎の熱力学では、物理化学という中間領域の研究になっています。

なので、扱うものによっては物理の単位系の方が便利ですし、逆に、化学の単位系にしておくと楽になるものもあります。

 

要は、単位系がちょうど混在してしまう領域の問題なんですね。

なので、公式の暗記を、文字だけで済ませてしまうと大いなるズレが生じてしまいますので、公式の各文字の単位まで意識しておく必要があります。

 

■位置エネルギー

 \(E=mgh\)

  \(E[J],m[kg],g[m/s^2],h[m]\)

 

■熱エネルギー(熱量)

 \(Q=mc\Delta T\)

  \(Q[J],m[g],c[J/(g・K)],T[K]\)

 

(1)

落下した水の運動エネルギーがすべて熱に変わったとしたら、という話です。もともと滝の上部にあった水の位置エネルギーが運動エネルギー、熱エネルギーと変換されていますが、すべて値が同じであったとしたら、という仮定ですので、もともとの位置エネルギーを計算することで答えを算出してしまいましょう。

 

水の密度は\(1g/cm^3\)なので、\(1cm^3\)あたりの水の質量は\(1g\)です。

ですから、\(1m=100cm\)ということから、\(1m^3=(100cm)^3=1.0×10^6cm^3\)あたりの水の質量は\(1.0×10^6g=1.0×10^3kg\)になります。

 

 \(1m^3\) あたり \(1.0×10^3kg\) より

 \(1.0×10^5m^3\) あたりでは \(1.0×10^8kg\)

 

これが\(60s\)間に落下する水の質量です。

 

よって\(1s\)あたりに落下する水の質量は

 \(\displaystyle\frac{1.0×10^8}{60}[kg]\)

 

\(E=mgh\) より

 \(E=\displaystyle\frac{1.0×10^8}{60}×9.8×110\)

  \(≒17.966666…×10^8\)

  \(≒1.8×10^9[J]\)

 

最後の計算では、質量がすべて\([kg]\)基準で統一されているから計算可能になっています。

 

(2)

今度は\(cgs\)単位系の公式の問題になりました。位置エネルギーが熱エネルギーに換算されるということから、

 

 \(Q=mc\Delta T\)

 

の左辺に(1)の公式を代入して計算するだけの問題だということにはすぐに気づけますが、単位が混在していて、それをどう修正すればいいのかに気付けるかは、また別の問題です。

 

まず左辺。これは、位置エネルギー\(E[J]\)も、熱エネルギー\(Q[J]\)も同じ単位になっていますので、全く同じ値を代入できます。

問題なのは右辺。\(m[g]\)の中には、(1)で求めた\(m[kg]\)が代入できませんので、\(1kg=1000g\)の換算に従って、\(m[kg]=m×10^3[g]\)としてやる必要があります。

 

よって、

 \(Q=mc \Delta T\) より

 

 \(\displaystyle\frac{1.0×10^8}{60}×9.8[kg] ×110=\displaystyle\frac{1.0×10^8}{60}\)\(×10^3[g]\) \(×4.2×\Delta T\)

 

 \(9.8×110=10^3×4.2×\Delta T\)

 

 \(\Delta T≒0.2566666…≒0.26[K]\)

 

となりました。何度も言いますが、質量について、左辺の\([kg]\)と右辺の\([g]\)がイコールで結ばれているわけではなく、左辺の文字を\([kg]\)で統一することで求めた\([J]\)と、右辺の文字を\([g]\)で統一することで求めた\([J]\)が等式関係になっている形です。

 

(3)

あとはおまけ。

\(1s\)間に与えた熱量の\(50\)%が仕事に変わっているそうなので、仕事率は(1)の値の半分です。

 

\(W[J]=1.79×10^9÷2=0.895×10^9\)

 \(=9.0×10^8[J]\)

 

仕事率は\(1s\)あたりにした仕事なので、今の計算がちょうど\(1s\)間での計算でしたから、

 

 \(P[W]=\displaystyle\frac{W}{t}=\frac{9.0×10^8}{1}\)

  \(=9.0×10^8[W]\)