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1987京大Ⅳ

■解答

(イ) \(8\)個  (ロ) \(^1_1H\)  (ハ) 同位体

(ニ) \(\beta\)崩壊 (ホ) \(0.71\)  (ヘ) \(1.1×10^{-12}\)

 

■解説

(イ)

「質量数=陽子数+中性子数」です。\(^14_6C\)の質量数は\(14\)で、原子番号\(6\)から陽子数が\(6\)個であることが分かりますので、中性子の数は\(14-6=8\)個、と求まります。

 

 

(ロ)

中性子は電荷がゼロで、質量数が\(1\)なので、「\(^1_0n\)」と表記できます。

なので左辺は \(^{14}_7N+^1_0n\) と書けます。

 

この核反応では、陽子の数の合計と中性子の数の合計が一致しますので、求める原子を\(X\)と置くと、

 \(^{14}_7N+^1_0n \rightarrow ^{14}_6C+^1_1X\)

と書けます。

 

原子番号\(1\)の原子は水素\(H\)であることは覚えているでしょうから、\(X\)をきちんと\(H\)と書いてやると、

 \(^{14}_7N+^1_0n \rightarrow ^{14}_6C+^1_1H\)

と書けます。

 

 

(ハ)

これは同位体です。同位体とは、原子番号が等しくて、質量数が異なる原子のことを言います。

 

(ニ)

(2)式の変化を見てみると、電子が飛び出していることから、この崩壊は\(\beta\)崩壊であると分かります。

 

(ホ)

半減期を\(T\)とすると、放射性物質は\(T\)年だけ経過すると、元の半分の量になり、さらに\(T\)年経過すると、さらに半分の量になります。

\(T\)年後に\(\frac{1}{2}\)倍、\(2T\)年後に\(\left(\frac{1}{2}\right)^2\)倍、\(3T\)年後に\(\left(\frac{1}{2}\right)^3\)倍、となりますので、放射性物質のもともとの量を\(N_0\)、崩壊後の量を\(N\)とすると、時間\(t\)だけ経過したときに残る放射性物質の量は、

 

 \(N=N_0\left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)^{\frac{t}{T}}\)

 

と書くことができ、これが半減期の公式となります。

いま、半減期が\(T=5700\)年のものが\(t=2850\)年経過したと推定されていますので、それぞれ代入してみると、

 

 \(N=N_0\left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)^{\frac{2850}{5700}}\)

 

 \(N=N_0\left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)^{\frac{1}{2}}\)

 

 \(N=\displaystyle\frac{N_0}{\sqrt{2}}\)

 

 \(N=\displaystyle\frac{N_0}{1.4}\)

 

 \(N=\displaystyle\frac{5N_0}{7}\)

 

 \(N=0.71N_0\)

 

となりますので、\(0.71\)倍、ということになりますね。

 

 

(ヘ)

今度はぐっと時間間隔を短く考えて、\(1\)時間あたりではどうなりますか、という話になりました。

とりあえず、\(5700\)年が何時間なのかをざっと計算しておきましょう。

 \(T=5700yr×365d×24h≒5.0×10^7h\)

となります。

なので、\(1h\)後に残っている放射性物質の量は

 

 \(N_{1h}=N_0\left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)^{\frac{1}{5.0×10^7}}\)

 

となります。

これは、元の量からちょうど\(400\)個だけ減った量に相当するということなので、

 \(N_0-N_{1h}=400\)

ということです。具体的に計算していきましょう。

 

 \(N_0-N_0\left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)^{\frac{1}{5.0×10^7}}=400\)

 

 \(N_0\left(1-2^{-\frac{1}{5.0×10^7}}\right)=400\)

 

\(1-2^{-x}=0.70x\)と近似できることから、

 

 \(N_0×0.70×\displaystyle\frac{1}{5.0×10^7}=400\)

よって

 \(N_0=\displaystyle\frac{5.0×10^7×400}{0.7}\) [個/L]

 

となります。気体\(1L\)あたり崩壊する原子(つまり\(^{14}_6C\))が、これだけの個数だけ大気中にあったということです。

 

これが、全体に対する割合で言うとどのくらいなのかということを計算するために、\(1mol\)分に直します。

\(22.4L\)をかければいいですので、

 

 \(N_0=\displaystyle\frac{5.0×10^7×400×22.4}{0.7}\) [個/mol]

 

となります。これが、\(1mol\)中に含まれている、\(^{14}_6C\)の数です。

\(1mol\)中には、原子は\(6.0×10^{23}\)個ありますので、割合に直すと、

 

 \(\displaystyle\frac{\frac{5.0×10^7×400×22.4}{0.7}}{6.0×10^{23}}\)

 

となります。これを計算すると、

 

 \(\displaystyle\frac{5.0×10^7×400×22.4}{0.7×6.0×10^{23}}\)

 

 \(=\displaystyle\frac{5.0×10^9×4×22.4}{0.7×6.0×10^{23}}\)

 

 \(=\displaystyle\frac{5.0×10^9×4×32}{6.0×10^{23}}\)

 

 \(=\displaystyle\frac{320}{3}×10^{-14}\)

 

 \(≒107×10^{-14}\)

 

 \(≒1.1×10^{-12}\)

 

となりました。