■解答
(ア) \(h\nu\) (イ) \(\displaystyle\frac{h\nu}{c}\) (ウ) \(mu\cos\phi\)
(エ) \(2c(\cos\phi-\sin\phi)\) (オ) \(\displaystyle\frac{2mc^2}{h}\cos\phi(\cos\phi-\sin\phi)\) (カ) \(\displaystyle\frac{2mc^2}{h}\sin\phi(\cos\phi-\sin\phi)\)
(キ) \(\displaystyle\frac{1}{2}u\) (ク) \(\displaystyle\frac{1}{4}mu^2\) (ケ) \(t_C+\displaystyle\frac{D}{c}\)
(コ) \(t_C+T+\displaystyle\frac{2D-uT}{2c}\) (サ) \(T\left(1-\displaystyle\frac{u}{2c}\right)\)
■解説
(ア) 光量子仮説の公式より \(E=h\nu\)
(イ) 光量子仮説の公式より \(p=\displaystyle\frac{h\nu}{c}\)
(ウ)
入射光子の進む向きに軸をとると、散乱光子は\(90°\)、粒子1が角度\(\phi\)をなしていることになります。
通常、\(x\)軸と\(y\)軸をとって考えることが多いですが、この問題では入射光子が斜めからの入射になっているので、入射光子の方を基準として分解をする設定にされています。
いま、入射光子が進む向きを仮に\(x'\)軸と呼ぶことにし、それと\(90°\)をなすように散乱光子が進む向きを\(y'\)軸と呼ぶことにします。
粒子1の速度を\(x'\)軸と\(y'\)軸に分解すると、それぞれ\(u\cos\phi\)、\(u\sin\phi\)となります。これらから、入射光子が進む向きへの運動量は\(mu\cos\phi\)
(エ)(オ)(カ)
問題文をたどって、
①入射光子の方向の運動量の保存則
②散乱光子の方向の運動量の保存則
③エネルギー保存則
の3本の式を立式します。
① \(\displaystyle\frac{h\nu}{c}=mu\cos\phi\)
② \(\displaystyle\frac{h’\nu}{c}=mu\sin\phi\)
③ \(h\nu=h\nu'+\displaystyle\frac{1}{2}mu^2\)
これを解くと、いっぺんに(エ)(オ)(カ)の解答が出そろいます。
①②より
\(h\nu=cmu\cos\phi\) ――①’
\(h\nu'=cmu\sin\phi\) ――②’
これらを③に代入すると
\(cmu\cos\phi=cmu\sin\phi+\displaystyle\frac{1}{2}mu^2\)
\(u=2c(\cos\phi-\sin\phi)\)
これが(エ)。これを①’と②’にそれぞれ代入すると、
①’ \(\displaystyle\frac{h\nu}{c}=m・2c(\cos\phi-\sin\phi)・\cos\phi\)
\(\nu=\displaystyle\frac{2mc^2}{h}(\cos\phi-\sin\phi)・\cos\phi\)
②’ \(\displaystyle\frac{h\nu'}{c}=m・2c(\cos\phi-\sin\phi)・\sin\phi\)
\(\nu'=\displaystyle\frac{2mc^2}{h}(\cos\phi-\sin\phi)・\sin\phi\)
これがそれぞれ(オ)と(カ)ですね。
(キ)
静止している質量\(m\)の粒子に、速さ\(u\)で動く質量\(m\)の粒子が衝突して一体化する、という問題です。長い文章中に埋まっていますが、問われていることはとても簡単です。
運動量保存則より、
\(mu=2mu'\)
\(u'=\displaystyle\frac{1}{2}u\)
(ク)
衝突前後での運動エネルギーの変化分が、衝突によって生じた内部エネルギーの大きさであると考えます。
\(\Delta K=\displaystyle\frac{1}{2}mu^2-\frac{1}{2}・(2m)・(\frac{1}{2}u)^2\)
\(=\displaystyle\frac{1}{2}mu^2-\frac{1}{4}mu^2\)
\(=\displaystyle\frac{1}{4}mu^2\)
(ケ)
実験開始がいつかは分かりませんが、一体化した\(2m\)の粒子3から、ある時刻\(t_C\)に赤外線が放射された、とあります。このとき放射された赤外線が距離\(D\)離れた観測者\(A\)のもとへ到達する時間は、「距離÷速さ」から
\(\displaystyle\frac{D}{c}\)
となりますので、「時刻」基準で見れば、
\(t_C+\displaystyle\frac{D}{c}\)
となります。
(コ)
\(T\)秒後、時刻\(t_C+T\)のときにも赤外線が放射されました。\(T\)秒経過する間に、粒子3は\(\displaystyle\frac{1}{2}uT\)だけ進みますので、観測者\(A\)との距離は\(D-\displaystyle\frac{1}{2}uT\)となります。
これも考慮して、放射された赤外線が観測者に到達するまでの時間は、(ケ)と同様に、「距離÷速さ」から
\(\displaystyle\frac{D-\frac{1}{2}uT}{c}\)
となりますので、「時刻」基準では
\(t_c+T+\displaystyle\frac{D-\frac{1}{2}uT}{c}\)
となります。粒子3が少し進んだ距離差の部分は読み落とさないと思いますが、時間差の部分\(T\)は忘れがちになりますので、時間と空間の両方に意識を向けられるよう普段から練習が必要です。
(サ)
あとは、その時間差はいくらですか、という計算ドリルですので、単純に式を追いかけていきましょう。
\(\Delta T=\left( t_c+T+\displaystyle\frac{D-\frac{1}{2}uT}{c} \right) -\left( t_c+\displaystyle\frac{D}{c} \right)\)
\(=T+\displaystyle\frac{D}{c}-\frac{uT}{2c}-\frac{D}{c}\)
\(=T-\displaystyle\frac{uT}{2c}\)
\(=T\left( 1-\displaystyle\frac{u}{2c} \right)\)