送電線で失われる電力は\(rI^2\)です。
\(IV\)を使って計算するのは誤りです。\(IV\)は、発電所の発電能力をさしていて、送電線で失われる電力を表した値ではありません。
もし、発電所で作った電圧を、すべて送電線で消費しつくしてしまったら、街には電圧が一つもかかっていないことになりますね。
電源電圧は、回路を一周したときに確かにゼロになりますが、送電線の問題の場合、”回路一周”の中に街まるごと一つ分が入っていることを忘れてはいけません。街で電圧降下が大きく起こるのであって、送電線では電圧降下が起こらないようにしなければいけません。
この問題で一番キーになるのは、消費電力を\(IV\)で計算するのではなく、\(rI^2\)で計算しなければいけない、ということです。
そこさえ押さえてしまえば、計算処理の部分は大したことのない問題です。
(1) \(rI^2=10×1^2=10W\)
(2) \(rI^2=10×10^2=1.0×10^3W\)
(3) \(rI^2=10×100^2=1.0×10^5W\)
問:送電線における消費電力が\(rI^2\)ということは、送電するときの電流\(I\)はできるだけ小さくしておかなければなりません。すると、オームの法則にしたがって、送電電\(V\)はできるだけ大きくしておかなければいけない、ということになります。
イメージで言うと、物体に運動エネルギーを持たせて動かそうと思ったとき、小さい質量の、たとえば弾丸のようなものを、とてつもなく速く飛ばしたとすると、空気抵抗を大いに受けて、エネルギーのロスが大きくなってしまいますが、大きい質量、たとえばトラックのようなものを同じ運動エネルギーで動かしたとすると、その動きはとてもゆっくりですので、空気抵抗によるロスは小さくなる、という感じでしょうか。
同じ大きさのエネルギーを運搬するにしても、ロスを小さく運ぶ方法とロスが大きくなる運び方とがあるようですね。