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ニュートン近似

ニュートン近似

\(1\)より十分小さい\(x\)に対して、\((1+x)^n\)を、\(1+nx\)と近似する方法を「ニュートン近似」あるいは「一次近似」と呼びます。

 

▼Newton近似

 \(x≪1\)のとき

 \((1+x)^n≒1+nx\)

 

この近似がなぜ成立しているのか、実際に数字を入れてみながら考えてみることにします。


■\(2\)乗の例

まずは\(2\)乗のときにどうなるのか、見てみましょう。

 

 \((1+x)^2 = 1^2 + 2x + x^2\)

 

となります。仮に、\(x\)が\(1\)より十分小さい値として、そうですね、\(x=0.1\)だったとしましょうか。

そうすると、

 

 \((1+0.1)^2 = 1^2 + 2×0.1 + 0.1^2\)

 \((1+0.1)^2 = 1 + 0.2 + 0.01\)

 \((1+0.1)^2 = 1.21\)

 

となり、展開した項のうち、第三項は小数第二位の数字しか持たないことになります。これは十分小さい値だから四捨五入してしまおう、ということです。

すると、

 

 \((1+0.1)^2 ≒ 1.2\)

 

ですから、

 

 \((1+0.1)^2 ≒ 1 + 2×0.1\)

 

と考えてもよさそうです。


■\(3\)乗の例

同様に、\(3\)乗のときにどうなるのか、見てみましょう。

 

 \((1+x)^3 = 1^3 + 1^2×3x + 1×3x^2 + x^3\)

 

となりますので、仮に\(x=0.1\)とすると、

 

 \((1+0.1)^3 = 1 + 3×0.1 + 3×0.1^2 + 0.1^3\)

 \((1+0.1)^2 = 1 + 0.3 + 0.03 + 0.001\)

 \((1+0.1)^2 = 1.331\)

 

となり、第三項と第四項は十分小さい値だから四捨五入してしまいます。

 

 \((1+0.1)^2 ≒ 1.3\)

 

ですから、

 

 \((1+0.1)^2 ≒ 1 + 3×0.1\)

 

と考えてもよさそうです。

やはり指数の\(3\)乗を機械的に下に落とすだけでよさそうです。


これが「ニュートン近似」と言われる計算の省略法で、\(1\)より十分小さい値\(x\)が見つかったときは何かと都合の良い計算となります。近似するとき、\(x\)の\(1\)乗の項までを残して、\(2\)乗以下の数字を十分小さいとして四捨五入していることに相当しますので、そのことを強調して「一次近似」とも呼ばれます。

 

「二次近似」とか「三次近似」のようなものはないのでしょうか。それは、別の近似方法に、「テイラー展開」や「マクローリン展開」というものがあり、この方法で近似すると次数を好きなところまで取ることができます。

 

これは大学内容に入りますので、高校物理では扱うことはありませんが、三角関数や指数関数であっても多項式に近似することができますので、結果だけ借りてきて、\(\sin\theta≒\theta\)とする、とか、\(\cos\theta≒1\)とする、といった記述をたまに見ることがあります。これらを証明しようとすれば、マクローリン展開などを頼らないといけなくなります。

 

また機会や要望があれば、触れてもいいかもしれませんね。