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2000京大Ⅲ

■解答

(ア) \(\displaystyle\frac{p_1V_1}{RT_1}\)  (イ) \(\alpha^{\frac{2}{5}}\)  (ウ) \(\displaystyle\frac{3}{2}(\alpha^{\frac{2}{5}}-1)\)

(エ) \(\displaystyle\frac{3}{2}(1-\alpha^{\frac{2}{5}})p_1V_1\)  (オ) \(\alpha^{-\frac{3}{5}}-1\)  (カ) \((1-\alpha^{\frac{3}{5}})\displaystyle\frac{p_1V_1}{RT_1}\)

(キ) \(p_2V_2\)  (ク) \(\displaystyle\frac{3(1-\beta)}{5\beta}\)  (ケ) \(\displaystyle\frac{3+2\beta}{5}\)

(コ) \(\displaystyle\frac{3(1-\beta)}{3+2\beta}\frac{p_1V_1}{RT_1}\)

  

■解説

(ア)

容器内にある気体の物質量を\(n\)とすると、状態方程式から、

 \(p_1V_1=nRT_1\)

 

 \(n=\displaystyle\frac{p_1V_1}{RT_1}\)

 

 

(イ)

ポアソンの法則((1)式)より、断熱変化すると気体の体積\(V\)は

 \(p_1V_1^{\frac{5}{3}}=(\alpha p_1)・V^{\frac{5}{3}}\)

 

 \(V_1^{\frac{5}{3}}=\alpha V^{\frac{5}{3}}\)

 

 \(V=\alpha^{-\frac{3}{5}} V_1\)

 

となる。なので、断熱膨張後の気体の温度を\(T\)として状態方程式を立てると、

 

 \((\alpha p_1)・(\alpha^{-\frac{3}{5}} V_1)=\displaystyle\frac{p_1V_1}{RT_1}・R・T\)

 

 \(\alpha ・\alpha^{-\frac{3}{5}}=\displaystyle\frac{T}{T_1}\)

 

 \(\alpha^{\frac{2}{5}}=\displaystyle\frac{T}{T_1}\)

 

 \(T=\alpha^{\frac{2}{5}}T_1\)

 

 

(ウ)

内部エネルギーの公式は、一般的には \(U=nC_VT\) ですが、この問題では単原子分子理想気体を考えているので、\(C_V=\displaystyle\frac{3}{2}R\) であると指定されています。なので、内部エネルギーを \(U=\displaystyle\frac{3}{2}nRT\) として使うことができます。

 

内部エネルギーの式をこの形ありきで覚えている人は、単原子分子理想気体の内部エネルギーの式が \(U=\displaystyle\frac{3}{2}nRT\) だ、というところまで押さえておきましょう。一般的には、内部エネルギーは \(U=nC_VT\) です。

 

さて、いま内部エネルギーの増加量を問われていますので、

 \(\Delta U=\displaystyle\frac{3}{2}nR\Delta T\)

 

 \(\Delta U=\displaystyle\frac{3}{2}・\frac{p_1V_1}{RT_1}・R・(T-T_1)\)

 

 \(\Delta U=\displaystyle\frac{3}{2}・\frac{p_1V_1}{T_1}・(T-T_1)\)

 

(イ)を代入して、

 

 \(\Delta U=\displaystyle\frac{3}{2}・\frac{p_1V_1}{T_1}・\left(\alpha^{\frac{2}{5}}-1\right)T_1\)

 

 \(\Delta U=\displaystyle\frac{3}{2}\left(\alpha^{\frac{2}{5}}-1\right)p_1V_1\)

 

 

(エ)

気体が外部になした仕事を\(+W\)となるように仕事の正の向きを定めます。

すると、熱力学第一法則より、

 

 \(Q=\Delta U+W\)

 

いま、断熱変化なので\(Q=0\)となり、

 

 \(W=-\Delta U\)

 

よって

 

 \(W=\displaystyle\frac{3}{2}\left(1-\alpha^{\frac{2}{5}}\right)p_1V_1\)

 

 

(オ)

 (イ)より、\(V=\alpha^{-\frac{3}{5}} V_1\) なので、シリンダー内の体積は、

 

 \(V-V_1=\left(\alpha^{-\frac{3}{5}} -1\right) V_1\)

 

 

(カ)

シリンダー内のみの部分について、状態方程式を立てる。このとき、シリンダー内にある物質量を\(n_2\)とする。

 \((\alpha p_1)・ \left(\alpha^{-\frac{3}{5}}-1\right) V_1=n_2・R・(\alpha^{\frac{2}{5}}T_1)\)

 

 \(n_2=\displaystyle\frac{p_1V_1}{RT_1}・\alpha \left(\alpha^{-\frac{3}{5}}-1\right) \alpha^{-\frac{2}{5}}\)

 

 \(n_2=\displaystyle\frac{p_1V_1}{RT_1} \left(1-\alpha^{\frac{3}{5}} \right)\)

 

 

(キ)

気体が外部に仕事をするのは、シリンダー内部の気体が増えていく過程のみです。

いま都合がいいことに、シリンダー内の気圧は\(p_2\)で保たれていますので、この圧力で\(\Delta V\)だけ体積が増加したときの仕事量を考えればいいですね。

よって、

 \(W=p\Delta V\)

 \(W=p_2V_2\)

 

この過程は圧力が一定ですが、多孔質体からじわじわと気体が漏れ出てきていて、シリンダー内の物質量は刻々と変わっています。こういうときの過程は「定圧変化」とは言いません。単に圧力が一定だった、というだけの変化です。

 

 

(ク)

系全体に注目して、内部エネルギーを求めます。

シリンダー内に気体がまだ染み出していないとき、

 \(U_{前}=\displaystyle\frac{3}{2}p_1V_1\)

 

次に、シリンダー内に気体が染み出したときの内部エネルギーを求めます。

 \(U_{後}=\displaystyle\frac{3}{2}p_2(V_1+V_2)\)

 

これをエネルギー保存の式でつなげばいいですが、最初に持っていた内部エネルギーのうち一部分を、ピストンを動かすための仕事\(W=p_2V_2\)として使うため、エネルギーで等式を立てると、

 \(U_{前}=U_{後}+W\)

となります。

よって、

 

 \(\displaystyle\frac{3}{2}p_1V_1=\frac{3}{2}p_2(V_1+V_2)+p_2V_2\)

 

 \(\displaystyle\frac{3}{2}p_1V_1=\frac{3}{2}p_2V_1+\frac{5}{2}p_2V_2\)

 

 \(3p_1V_1=3p_2V_1+5p_2V_2\)

 

 \(3V_1=3\beta V_1+5\beta V_2\)

 

 \(5\beta V_2=3(1-\beta)V_1\)

 

 \(V_2=\displaystyle\frac{3(1-\beta)}{5\beta}V_1\)

 

 

(ケ)

系全体について、状態方程式を立てると、

 \(p_2(V_1+V_2)=nRT\)

 

 \(p_2\left(1+\displaystyle\frac{3-3\beta}{5\beta}\right)V_1=\frac{p_1V_1}{RT_1}・RT\)

 

 \(\beta・\displaystyle\frac{3+2\beta}{5\beta}=\frac{T}{T_1}\)

 

 \(T=\displaystyle\frac{3+2\beta}{5}T_1\)

 

 

(コ)

物質量を\(n'_2\)として、シリンダー側だけについて、状態方程式を立てると、

 \(p_2V_2=n'_2RT\)

 

 \(\beta p_1・\displaystyle\frac{3(1-\beta)}{5\beta}V_1=n'_2R・\frac{3+2\beta}{5}T_1\)

 

 \(3(1-\beta)p_1V_1=n'_2(3+2\beta)RT_1\)

 

 \(n'_2=\displaystyle\frac{3(1-\beta)p_1V_1}{(3+2\beta)RT_1}\)

 

 

一応まとめてみましたが、置いている文字が重複してたり、定義なしで使っていたり、いろいろ雑な感じになっていますので、使うときはその辺のところは自分で直しながら使ってください。