一見すると難しいように見えますが、この問題では張力を聞いてないので、全体を一つの物体と考えて、質量 \((M+m)\) の1物体の運動方程式と解釈すると楽になりそうです。
大きな流れとしては、次の3ステップで解答を仕上げます。
① まず重力を作図します。
② 次に、物体が動く方向を予想して、摩擦力の向きを書き入れます。
③ 最後に、力のつり合いや運動方程式を立てていきます。
斜面上に物体があるとき、重力\(mg\)を作図したあと、斜面下方向と、斜面に対して垂直な軸の方向に力を分解するのが王道です。
このとき、重力の斜面下方向の分力は \(mgsin\theta\)
重力の斜面に垂直な軸方向の分力は \(mgcos\theta\)
となりますので、摩擦力は\(\mu mgcos\theta\) となります。
これらを公式のように活用すると便利ですので、斜面上の物体が問題に出てきたときにラクをする”小手先のワザ”として、知っておくといいでしょう。ただし、本質の部分を置いていっていますので、のちのち、なぜそうなるかということは考えておいてください。
▼斜面上の物体に関係する公式
斜面下方向にかかる重力
\(mgsin\theta\)
斜面上の物体が受ける最大(静止)摩擦力
\(\mu mgcos\theta\)
斜面上の物体が受ける動摩擦力
\(\mu' mg cos\theta\)
(1)
まず斜面下方へ\(mgsin\theta\)の重力を作図。
物体は斜面下方に進もうとするので、摩擦はそれを止める向きに働きます。
つまり、斜面上方へ\(\mu mgcos\theta\)となります。
すべり出す瞬間はまだ物体は止まっていますので、物体にかかる斜面下向きの重力は、摩擦力と物体\(B\)が引く斜面上向き力と、等しくつりあっています。よって、
\(mgsin\theta =\mu mgcos\theta+M_1g\)
が成立します。両辺\(g\)で割って、移項して整理してやると、
\(M_1=msin\theta -\mu mcos\theta\)
ここで止めても正解としてもらえますが、共通因数をくくってある方がデザインがきれいですので、
\(M_1=m(sin\theta-\mu cos\theta)\)
として、これを模範解答として採用しているようですね。
(2)
物体は斜面上方に動こうとしているので、摩擦はその逆向きで、斜面下方に加わっています。
つまり(1)の問題の摩擦力の符号が逆になります。
(1)と同様に、すべり出す瞬間はまだ物体は止まっていますので、物体にかかる斜面下向きの重力と、斜面下向き摩擦力の和が、物体\(B\)が引く力と等しくつりあうことになります。よって、
\(mgsin\theta +\mu mgcos\theta=M_2g\)
両辺\(g\)で割って、移項して整理してやると、
\(M_2=msin\theta +\mu mcos\theta\)
同様に、共通因数をくくってある方がデザインがきれいですので、
\(M_2=m(sin\theta+\mu cos\theta)\)
として、これを模範解答として採用していますね。
(3)
物体\(B\)を、さらに重たい\(M_3\)にすると、ついに物体は動きだし、摩擦力は動摩擦力に変化します。
式の上では\(\mu\)が\(\mu'\)になるだけですね。物体\(A\)は斜面上向きに動き出しますので、動摩擦力は斜面下向きにかかります。
このとき、計算のコツとして、物体を一体化させて、質量 \((M_3+m)\) の物体一つが運動していると考えます。
運動方程式 \(ma=F\) より
\((M_3+m)a=M_3g-mgsin\theta-\mu'mgcos\theta\)
としてしまいます。
この左辺を移項させると、
\(a=\displaystyle\frac{M_3g-mgsin\theta-\mu'mgcos\theta}{M_3+m}\)
ここで止めても正解になりますが、\(mg\)をくくってしまって、
\(a=\displaystyle\frac{M_3g-mg(sin\theta+\mu'cos\theta)}{M_3+m}\)
とすると、デザインが少しきれいになります。さらに\(g\)も共通因数としてくくってしまって、分数の横につけてしまえば、
\(a=\displaystyle\frac{M_3-m(sin\theta+\mu'cos\theta)}{M_3+m}g\)
となり、なお式のデザインは美しくなりますね。模範解答は、ここまで式変形しているようです。