新リ物基 応問91

(1)

まずそれぞれの物体の重力を作図し、そのあとで張力を\(T\)として作図しましょう。 糸は1本しかないので、張力\(T\)はどこでも同じです。図を参照してください。

 

問題文に物体Aは上方へ、物体Bは下方へ運動する、と書いてあるので、それぞれ問題文の通りに加速度の正の向きを設定します。

 

物体Aにはたらく力は張力Tが鉛直上向きに2本あるので、\(T\)ではなく\(2T\)になることに注意が必要です。物体Bについては張力は\(T\)だけでいいですね。

 

物体Aについて、鉛直上向きを正、物体Bについて、鉛直下向きを正として、運動方程式を立てると、

A:\(mα=2T-mg\)

B:\(Mβ=Mg-T\)

 

物体Aの加速度が\(a\)ではなく\(α\)になっている点、物体A、Bの質量がそれぞれ\(m\)、\(M\)になっている点に注意をしてください。

 

(2)

運動方程式を解きたいところですが、動滑車が出題されると、そう簡単には連立式が解けません。模試でも定番の動滑車運動方程式の問題です。このタイプの問題は、加速度について\(α\)と\(β\)の関係性を示すところからスタートします。

 

▼動滑車のある2物体の運動方程式

複数の種類の加速度を1つの文字に置き換える

 

物体Aが1m上昇する間に、動滑車の左右の糸がそれぞれ1m巻き取られていますので、物体Bは2m下降しています。 これらは当然ながら同じ時間で起きる出来事なので、物体Aと物体Bとの変位が2倍の差になるだけでなく、速度も加速度も2倍の差になっています。 つまり物体Aより物体Bの方が2倍速く加速しているわけです。

よって\( β=2α\) となります。

 

これを元の運動方程式に代入すると、

A:\(mα=2T-mg\)

B:\(2Mα=Mg-T\)

 

これなら連立式が解けそうです。B×2をすると、

A:\(mα=2T-mg\)

B:\(4Mα=2Mg-2T\)

 

辺々足して

\((m+4M)α=2(M-m)g\)

 

\(α=\displaystyle \frac{(2M-m)g}{m+4M}\)

 

また、\(β=2α\)より

 

\(β=2\displaystyle \frac{(2M-m)g}{m+4M}\)

 

 

\(α\)をAの式に代入して

\(m・\displaystyle \frac{(2M-m)g}{m+4M}=2T-mg\)

 

\(2T=mg・\displaystyle \frac{2M-m}{m+4M}+mg\)

 

\(2T=mg\displaystyle \frac{2M-m}{m+4M}+1\)

 

 

第2項の「1」を通分して

\(2T=mg \left[ \displaystyle \frac{2M-m}{m+4M}+\frac{m+4M}{m+4M} \right] \)

 

\(2T=mg・\displaystyle \frac{2M-m+m+4M}{m+4M}\)

 

\(2T=mg・\displaystyle \frac{6Mm}{m+4M}\)

 

\(T=\displaystyle \frac{3mMg}{m+4M}\)

 

(3)

基本例題16と同様に、あとは物体Bにだけ注目していくと、単に距離\(h\)を加速度\(β\)で落下していくだけの問題だと読み替えることができるので、等加速度運動の公式を使えばいいですね。

 

ただ、今回は基本例題16と違って、床に到達するまでの時間は聞いていないので、わざわざ距離の公式から時刻tを求めてから、速度の公式に代入する、なんていう回りくどい方法を取らなくても、3つめの公式\(v^2-v^2_0=2ax\)から一発で出す方がスマートでしょう。

 

\(v^2-v^2_0=2ax\) より

 

\(v^2=2βh\)

 

\(v^2=2・\displaystyle\frac{2(2M-m)g}{m+4M}・h\)

 

\(v=2\displaystyle\sqrt{\frac{(2M-m)gh}{m+4M}}\)