質量欠損
原子は原子核と電子からできています。原子核はいくつかの陽子と、いくつかの中性子からなり、それぞれの質量は電子と比較すると\(1840\)倍の差があるため、原子の質量は陽子と中性子の重さでほぼ決まります。
例えばヘリウム(\(He\))の原子の質量は、陽子2つと、中性子2つの4粒の質量の合計で決まるわけです。
ところが科学が進み、実験を繰り返していると、あることに気づきました。
陽子1つの質量を2倍し、中性子1つの質量を2倍し、それらを足す、という操作で質量は計算されるはずなんですが、4粒をまとめたときの質量は粒子がバラバラだとして考えたときの質量よりも軽くなってしまうんです。
しかも、これは手順や考え方、実験の手法などによるミスではなく、本当に質量に差が出ているようなんですね。
これまで質量保存則を信じ切っていた科学には大きな驚きとなりました。
このとき、バラバラに核子が存在しているときの質量和と、結合しているときの質量との質量の差のことを「質量欠損」と呼びます。
質量欠損の計算
原子番号\(Z\)、質量数\(A\)の、ある原子核を考えることにします。このとき、陽子の質量を\(m_p\)、中性子の質量を\(m_n\)、電子の質量は十分軽いものとして無視します。また、原子核の質量は\(m_0\)とします。
確認ですが、
原子番号\(Z\):陽子の数の合計
質量数\(A\) :陽子と中性子の数の合計
です。なので、\((A-Z)\)が中性子数ですね。
原子核の核子がバラバラのときの総質量は、
\(Zm_p+(A-Z)m_n\)
で、原子核の核子が固まっているときの総質量は、
\(m_0\)
ですので、それらの質量の差は
\(\Delta m=Zm_p+(A-Z)m_n-m_0\)
となり、これが質量欠損を表す式になります。
▼質量欠損
\(\Delta m=Zm_p+(A-Z)m_n-m_0\)
\(Z\):原子番号 \(A\):質量数 \(m_p\):陽子の質量
\(m_n\):中性子の質量 \(m_0\):原子核の質量
エネルギーの等価性
では失われた質量はどこに消えたのでしょうか。これは高校範囲を大きく超えてしまうので証明ができなくて残念なのですが、アインシュタインが提唱した特殊相対性理論によって解決されています。
アインシュタインによると、質量とエネルギーは同等であり、
\(E=mc^2\)
という関係によって表すことができる、としています。このときの\(E\)のことを「静止エネルギー」といいます。
これを質量欠損の考え方に適用すると、失われた質量はエネルギーに変換されており、このエネルギーは核子をつなぎとめるための「結合エネルギー」として使われている、という解釈になります。
なので、結合エネルギーを\(\Delta E\)とおけば、
\(\Delta E=\Delta m c^2\)
という関係を表すことができます。
▼静止エネルギー
\(E=mc^2\)
▼結合エネルギー
\(\Delta E=\Delta mc^2\)