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1996阪大Ⅰ

■解答

問1 \(v=\sqrt{\displaystyle\frac{1}{2}gR} [m/s]\)  問2 \(v=5.6×10^3 [m/s]\)

問3 (\(F_A\))大きさ \(F_A=\displaystyle\frac{3mgl}{8R}\)  向き 1

   (\(F_B\))大きさ \(F_B=-\displaystyle\frac{3mgl}{8R}\)  向き 7

問4 点A:1  点B:6

問5 点Aの方が点Bと比べて円運動の半径が大きく、ボールの速さが速いため。(34字)

■解説

 

▼公式確認

 万有引力

  \(F=G\displaystyle\frac{Mm}{r^2}\)

 

 万有引力による位置エネルギー(無限遠点基準)

  \(U=-G\displaystyle\frac{Mm}{r}\)

 

 万有引力定数の変換式

  \(GM=gR^2\)

 

 

問1

等速円運動の運動方程式より、

 

 \(M\displaystyle\frac{v^2}{2R}=G\frac{MM_E}{(2R)^2}\)

 

ここで、この問題では万有引力定数\(G\)が使えませんので、今後\(G\)が必要になるときには問題文に指示されているように、すべて\(GM_E=gR^2\)を使って書き換えていくことにします。すると、

 

 \(M\displaystyle\frac{v^2}{2R}=\frac{mgR^2}{(2R)^2}\)

 

よって 

 

 \(v^2=\displaystyle\frac{gR^2}{2R}=\frac{1}{2}gR\) 

 

 \(v=\sqrt{\displaystyle\frac{1}{2}gR} [m/s]\)

 

\(gR\)は分子に乗ってても問題ありません。

 

 

 

問2

(1)の式に与えられている値を代入しましょう。

 

 \(v=\sqrt{\displaystyle\frac{1}{2}・9.8・6.4×10^6}\)

 

この手の計算が出てきたときは、正直に掛け算を計算するのは避けましょう。

ルートの中が煩雑な時には、素因数分解を活用します。今回の計算ではまず真っ先に小数を消し去ることから操作してやります。

 

 \(v=\sqrt{\displaystyle\frac{1}{2}・98・64×10^4}\)

 \(v=\sqrt{49・64×10^4}\)

 \(v=7・8×10^2\)

 \(v=5.6×10^3 [m/s]\)

 

となりました。ちなみに、半径\(2R\)の程度の軌道は中軌道と呼ばれる軌道で、地上から\(2000km\)まで、多くは数百キロ程度の高さにある低軌道と呼ばれる軌道と、高度\(36000km\)にある静止軌道のちょうど中間くらいの高さに位置します。

中軌道衛星は少し距離が遠く、光の往復に時間がかかるため、リモートセンシング(遠隔でセンサーを用いて観測すること)には不向きですが、地球全体をカバーするのには適している距離ですので、GPSや衛星電話などに利用されています。

 

 

問3

今回の問題設定では、宇宙ステーションの中心の点で、万有引力と遠心力がつり合っています。

なので、宇宙ステーションの天井ではわずかに万有引力が小さく遠心力が強くなり、宇宙ステーションの床では万有引力が大きく遠心力が弱くなります。「わずかに」というのが、どの程度かはさておき、即座に判断できるのは、宇宙ステーションの壁面近くの物体は天井か床に押し付けられているということです。

 

つまり向きは特に計算で考えなくても①と⑦の向きだとわかるんですが、念のため計算でも向きを確認しておこうと思います。また、求めるものは、ベクトルとしての力を求めていますので、力の大きさと向きとを答えるようにします。

 

鉛直上向きを正として、点\(A\)における合力の大きさを\(F_A\)とすると、地球中心から見た円軌道の半径が\(2R+l\)であることから、

 

 \(F_A=m(2R+l)\omega^2-G\displaystyle\frac{M_Em}{(2R+l)^2}\)

 

ここで、半径\(2R\)(地表からの高さ\(R\))にある人工衛星の速さを\(v\)としているので、

 

 \(\omega=\displaystyle\frac{v}{2R}=\frac{1}{2R}\sqrt{\frac{1}{2}gR}=\sqrt{\frac{g}{8R}}\)

 

を代入すると、

 

 \(F_A=m(2R+l)・\displaystyle\frac{g}{8R}-G\frac{mgR^2}{(2R+l)^2}\)

 

  \(=\displaystyle\frac{mg(2R+l)}{8R}-\frac{mgR^2}{(2R+l)^2}\)

 

  \(=\displaystyle\frac{mg(2R+l)}{8R}-\frac{mgR^2}{(2R)^2(1+\frac{l}{2R})^2}\)

 

  \(=\displaystyle\frac{mg(2R+l)}{8R}-\frac{mg}{4}\left(1-2・\frac{l}{2R}\right)\)

 

  \(=\displaystyle\frac{mg(2R+l)}{8R}-\frac{mg}{4}・\frac{R-l}{R}\)

 

  \(=\displaystyle\frac{mg(2R+l)-2mg(R-l)}{8R}\)

 

  \(=\displaystyle\frac{3mgl}{8R} [N]\)

 

これはプラス符号なので、鉛直上向きになりますね。よって向きは①

 

 

点\(B\)も同様に、合力の大きさを\(F_A\)とすると、

 

 \(F_B=m(2R-l)\omega^2-G\displaystyle\frac{M_Em}{(2R-l)^2}\)

 

ここに

 \(\omega=\displaystyle\sqrt{\frac{g}{8R}}\)

を代入すると、

 

 \(F_B=m(2R-l)・\displaystyle\frac{g}{8R}-G\frac{mgR^2}{(2R-l)^2}\)

 

  \(=\displaystyle\frac{mg(2R-l)}{8R}-\frac{mg}{4}\left(1+\frac{l}{R}\right)\)

 

  \(=-\displaystyle\frac{3mgl}{8R} [N]\)

 

今度は一部の符号の違いがずっとついてきて、最終的にはマイナスの結果になりました。

つまり、鉛直下向きになりますね。よって向きは⑦

 

 

問4

宇宙ステーションの向きは回転している間ずっと鉛直軸上にあります。

ということは点\(A\)の方が円軌道の半径が大きく、点\(B\)の方が円軌道の半径が小さいですので、角速度が同じであれば、半径が大きい点\(A\)の方がより早く動いているということになります。

つまり、

 \(v_A>v>v_B\)

という関係が成立しますので、点\(A\)の速さをもった物体が少し下に降りてくると、進行方向に軸をとったときに、宇宙ステーションより物体の方が速く回転していくことになります。

よって①になります。

 

回転というのは、地球の中心から見ての回転、つまり公転のようなことを意味します。

要は、宇宙ステーションが図の左に進む速さより、物体が図の左に進む速さの方が速いので、①になる、ということです。

 

逆に点\(B\)の物体は宇宙ステーションの中心より遅く地球の周囲を回転していますので、少し持ち上げると、宇宙ステーションが図の左に進む速さより、物体が図の左に進む速さの方がおそいです。

すると物体は取り残されますので⑥、ということになります。

 

 

問5

あとは今書いたような内容を40字以内になるまでまとめましょう。

例として次のように書いてみます。

 点\(A\)の方が点\(B\)と比べて円運動の半径が大きく、ボールの速さが速いため。(34)