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剛体1 剛体

質点

 物体の大きさが、物体の運動の状況に影響しない場合、その物体の質量が物体の中のある一点に集中しているとして、大きさを考えない場合があります。このような点を「質点」といいます。

 

 例えば、太陽の周りを公転する地球の運動を考えるとき、地球が行う円運動の軌道に対して、太陽も地球も割合としてはかなり小さい存在になりますので、それぞれの天体を質点として考えます。

 

 このように、運動の状況を考えるときに、その物体がすべて質点であるとして扱う力学系を「質点系」とよびます。いままでの力学の問題はすべて質点系で考えられていて、登場する物体の大きさはすべて無視されていました。

 

剛体

 ところが、実際の物体は大きさも考慮されていますから、質量はあるけれど大きさはない、というモデルは制約が厳しいようにも思います。そこで、条件を少しゆるめて、物体の大きさも考えることにします。

 

 ただ、大きさがあるとすると、もしかしたらスライムのように力を加えると形を変えるものかもしれませんし、豆腐のように上に物体を置くと崩壊してしまうようなものかもしれませんので、単純に大きさがある、とだけ条件を追加すると、そのほかの条件がどうなっているかまで考慮しなくてはいけなくなります。

 

 そこで、大きさはあるけれど、力を加えても一切変形も崩壊もしないような理想的な物体を考えることにします。このような物体を「剛体」といいます。

 

 剛体を考えると、質点系のときには考慮されなかった物理現象が現れます。たとえば棒を床において、棒の端を上に持ち上げたときの様子を考えてみます。棒を質点として考えると、物体は力が加わった方に動くだけですから、棒は水平な状態を保ったまま上に持ち上がっていきます。

 実際はそんなことは起こりえませんよね。持ち上げようとした端の部分は持ち上がるでしょうが、その反対の端はきっと床についたままになっていると思います。

 これは物理的に運動の状態を説明するなら、「回転運動」の要素が入っていることになります。

 

 剛体の運動は、質点のときのように、力を加えた方向に動く、という「並進運動」に加えて、「回転運動」まで考慮するということになります。

 なので、問題を解くときには、並進運動に関する方程式と、回転運動に関する方程式を立てて、それらを連立することで物理現象を解析していく、という流れが大きい流れになります。