静電気(摩擦電気)
物質同士をこすり合わせると、静電気を帯びます。摩擦させて電気を発生させるので、摩擦電気と言うこともあります。これは中2の電気分野でも勉強したところですが、実は大事なことを忘れてる人もいるんですね。それが何かと言うと、1つは摩擦させるものが2種類必要だということ。
同じ種類のストローとストローをこすり合わせても、同じ数だけの電気が移動するので、結果的につり合って静電気は発生しません。もう1つは、こすり合わせるものが電流を流さないものでなければいけないということです。金属板と金属板をこすり合わせたときは、仮に静電気が発生していたとしても、きっとすぐに電流になってどこかに流れていると思いますよ。
電流を流さないものを「不導体」もしくは「絶縁体」といいます。2種類の異なる不導体を用意したとき、不導体だって物質なので、原子核があって、その周りに電子が存在しています。だから+と-の電気を莫大に持っています。化学のモル計算をすると、具体的に何gの不導体に何個の電子が含まれているのか、なんていうものは計算できますが、ともかく、ものすごい数の電気の粒が存在しています。
ただ、その+と-の粒はもともと同じ数ずつ存在していて、すべて打ち消し合っているので、物質の外から見たときには静電気を帯びているようには見えません。この状態を、電気的に中性な状態と言います。
この2種類の物質をこすり合わせて、静電気を発生させるとき、原子の構造から考えると、-の電気だけが移動します。物質同士をこすり合わせるとき、表面の原子どうしをこすり合わせていることになるんですが、表面をこすり合わせた結果、中心にある原子核が移動して、表面にある電子は移動しない、なんていうことは説明に苦しさがありますよね。
こすった結果、表面にある電子が移動した。こっちの方が理論的にしっくりくるような気がします。
こすり合わせた結果、片方の物質は-の電気が減って、トータルで見て+の電気を帯びている状態になっています。この状態を正に帯電した状態と言います。もう片方の物質は逆に、-の電気を帯びているので、負に帯電した状態と言います。このとき、-の粒が移動しただけなので、トータルで考えると電気の粒の総数は一定です。こんな風に、総数で考えると電気の量が一定であるという法則を「電気量保存則」と言います。
▼電気量保存則
物質が持つ電気の量の総和は、常に一定である
電気量
「電気量」という物理量が登場しましたが、これがどのくらいの量なのかを取り決めておきましょう。
電気量とは、+の電荷や-の電荷が持っている電気の量を表しています。なので、正電荷なら電気量はプラス、負電荷なら電気量はマイナスの値を示します。 いま、突然「電荷」という言葉を使いましたが、電荷というのは電気の粒の正式な言い方です。せっかく専門的な物理を勉強しているのにいちいちプラスの粒、マイナスの粒、と表現しているとちょっと幼いイメージがあるので、理系としてはやっぱり「正電荷」「負電荷」と表現しときたいですよね。
この電気量ですが、単位は「\(C\)(クーロン)」を使います。このクーロンは連続量ではなく、それ以上分けることができない最小の大きさを持ちます。持ちます、というか、持つと考えられていました。最新の研究では、まだまだ細かくできるようですけど、その辺を語り出すと難しい話になりそうなので、今はなかったことにしときますね。
その量が「電気素量」と呼ばれる量で、「e」を使って表現されます。大きさは、\(1.6×10^{-19}C\)です。つまり、電子\(1\)個分の電気量なら\(-1.6×10^{-19}C\)となりますし、例えば炭素原子の原子核の電気量であれば、陽子が\(6\)個あるので、\(+1.6×10^{-19}×6=9.6×10^{-19}C\)ということです。
つまり、全電気量は電気素量×電荷の数で求めることができるので、全電気量を\(q\)で表すのであれば、\(q=ne\)と表現できます。ここで\(n\)は電荷の数のことです。
▼電気素量と電気量
電気素量:電荷\(1\)つ分の電気量
\(e=1.6×10^{-19}C\)
電気量 :電荷\(n\)個分の電気量
\(q=ne\)
引力と斥力
静電気によってはたらく力のことを、「静電気力」と呼びます。同じ電荷どうしであれば、斥力(しりぞけあう力)がはたらくし、違う電荷どうしであれば引力がはたらきます。これ自体は中2の内容と全く同じですが、専門の物理になると、その静電気力って具体的に何\(N\)に相当するの?ということまで踏み込みます。
放電
空間中を電気が移動していくことを「放電」といいます。放電には気体放電、真空放電、火花放電などが知られています。気体放電、真空放電は極板間の状態が真空なのか、何か気体が含まれているのかによって名づけられていますが、火花放電は起こる現象が由来となって名づけられています。なので、気体放電で火花放電が起きた、というような表現をしてもいいわけですね。
真空放電は極板間の状態を真空にして行う放電だと勘違いしそうですが、ここでいう「真空」とは希薄な気体のことを表していて、JISの規格では「大気圧より低い圧力の気体で満たされている特定の空間の状態」と定められています。だから0.1気圧程度の圧力であっても真空とみなして良いわけです。
火花放電は、コンロのスイッチを入れたときや、ライターをカチッと押すとき、静電気まみれになったセーターを着ていたら冬場に指がバチッとなってしまった、というようなときに見られる現象で、大きいものであれば落雷が火花放電の一種ということになります。
電流
\(1[s]\)間に、ある断面を通過する電気量の大きさを「電流」といいます。式で表すと、
\(I=\displaystyle\frac{\Delta Q}{\Delta t}\)
と表されます。物理の数式にはいろんな種類の式がありますが、この式は「定義式」です。何かを変形して行きついた式ではなく、電流の大きさがこうであると決めよう、として人為的に決めた式ですので、この式には導出がありませんし、今後、電流に関係する問題が出たときには条件にかかわらず、この等式が成立していることになります。
ただ、分数だと使い勝手が悪いですので、移項させて、
\(\Delta Q=I\Delta t\)
もしくは
\(Q=It\)
としてしまって、こちらを覚えておく方が便利かもしれません。