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新リ物 基56

(1)

 斜面を水平方向に加速させたところ、斜面に摩擦がないにも関わらず、小物体は滑り落ちなかったという設定です。

 

 これは、物体と同じく移動する座標系から見たとき、斜面が加速する向きと逆向きに押し付けられるためですね。

 

 

 このとき、斜面の加速度と逆向きの「見かけの加速度」「慣性加速度」といい、これによって発生するような力、この問題では斜面に押し付けられる力のことを「慣性力」と言います。

 この「慣性力」と、もともと小物体にかかっている「重力」との合力が、ちょうど垂直抗力の方向とそろえば、小物体は斜面の上にも下にも進まないことになります。

 

 で、その大きさは、\(tan\)を使うのが一番早く求められそうです。

 

\(\tanθ=\displaystyle\frac{慣性力}{重力}\)

 

\(\tanθ=\displaystyle\frac{ma}{mg}\)

 

よって

 

\(a=g\tanθ\)

 

(1)別解

 慣性力重力を、それぞれ斜面方向と斜面に垂直な方向に分解します。図の中には大きさを書くのを省略していますが、上手に\(θ\)を取ってやると、斜面方向の力は、

 

慣性力:斜面上向きに\(ma\cosθ\)

重力:斜面下向きに\(mg\sinθ\)

 

となり、これがつり合うとき、小物体が斜面上にも斜面下にも進まないので、

 

\(ma\cosθ=mg\sinθ\)

 

\(a=\displaystyle\frac{g\sinθ}{\cosθ}\)

 

\(a=g\tanθ\)

 

 

(2)

 斜面の加速度が2倍になると、慣性力も2倍の\(2a\)になります。

 すると、分解した後の、斜面方向上向きの力も2倍の\(2ma\cosθ\)になるので、力のつりあいは解除されて、小物体は斜面上向きに進みます。

 

 こうなると解法は、力のつりあいではなく運動方程式に変わります。

斜面上向きを正として、小物体の斜面から見た加速度を\(\alpha\)とすると、

 

\(m\alpha=2ma\cosθ-mg\sinθ\)

\(\alpha=2a\cosθ-g\sinθ\)

 

(1)より \(a=g\tanθ\) なので、

 

\(\alpha=2・g\tanθ・\cosθ-g\sinθ\)

\(\alpha=2g\sinθ-g\sinθ\)

\(\alpha=g\sinθ\)