この問題は、仕事の単元から考えるよりもエネルギーの単元で考える方が分かりやすいと思います。
▼仕事とエネルギー
元のエネルギー+仕事=後のエネルギー
\(E_0 + W = E\)
という公式があるので、これを使うことにしましょう。
物体系を引く前はばねも伸びておらず、動きもせず、高さもありませんので、最初のエネルギーは0です。
一方で、ばねを\(x\)だけ引いたあとは、ばねには弾性エネルギーが\(\displaystyle\frac{1}{2}kx^2\)だけ蓄えられます。また、動摩擦力\(f=\mu'mg\)を受けながら\(x\)だけ移動していますので、摩擦によって\(W=\mu'mgx\)だけエネルギーが利用されています。
つまり、人が仕事をしたことで、そのエネルギーのうちのいくらかはバネに行き、いくらかは摩擦熱に行った、ということを式に表せばよさそうです。
\(E_0+W=E\) より
\(0+W=\displaystyle\frac{1}{2}kx^2+\mu'mgx\)
\(W=\displaystyle\frac{1}{2}kx^2+\mu'mgx\)
慣例で、特にくくる必要はありません。
摩擦の符号がしっくりこない人は、
\(E_0+W=E\) より
\(0+W-\mu'mgx=\displaystyle\frac{1}{2}kx^2\)
\(W-\mu'mgx=\displaystyle\frac{1}{2}kx^2\)
\(W=\displaystyle\frac{1}{2}kx^2+\mu'mgx\)
とすると分かりやすいかもしれません。
右辺に置く場合は、「摩擦は+\(\mu'mgx\)の(熱)エネルギーになった」と解釈し、左辺に置く場合は、「摩擦は\(-\mu'mgx\)の仕事を行う」と解釈します。
上の解き方は、「仕事=弾性エネルギー+摩擦熱エネルギー(正)」という意味で、
下の解き方は、「手がした仕事+摩擦がした仕事(負)=弾性エネルギー」という意味です。
私はエネルギーで考えるのが好きなので、摩擦エネルギーをすぐ右辺に書くクセがありますが、仕事で考える方がしっくりくるのであれば、左辺においても、式の上では同じです。