「水圧」という言葉は、「水の重さによる圧力」と「ある深さにおける圧力」の2つの定義があり、どちらが本当の意味での「水圧」を説明しているのかが決まっていません。そのため、表現方法が2種類あるわけです。
例えば、水深10mでの水圧はいくらか、と問われたときに、ある科学者は10m分の水の重みから水圧を計算しようと言います。ところが別の科学者は、水深10mでは水10m分の重みに加えて、さらに大気圧が1気圧分かかっているから、これも加えて表現しないと水深10mでの水圧は正しい値を説明したことにはならないと、そう言うんです。
どちらの説明も理論の部分は正しいですが、「水圧」という言葉の意味のとらえ方に違いがあるので、数値としては異なるものを出しているわけです。
じゃあ、どう判断したらいいのか。いろいろな問題を見ていると、どうやら言葉どおり「水の重さによる圧力」のことを「水圧」と呼び、大気圧も含めて考えている方の水圧は「ある深さにおける圧力」と表現して使い分けているようです。特にややこしく考えなくても、言葉通りに判断したらよさそうですね。
▼水圧公式
水圧
\(p=ρhg\)
ある深さにおける圧力
\(p=p_0+ρhg\)
水圧の公式を見ると、初登場の「\(ρ\)」がいます。この文字は「ロー」と読み、液体の密度を表します。問題を解くときには、「物質の」密度と「液体の」密度の両方が同じ問題文中に出題されることがあります。公式を使うときには、「液体の」密度を使うように気をつけましょう。\(h\)は水深、\(g\)は重力加速度です。これはいいですね。
\(p_0\)は前回説明している大気圧です。\(1013hPa\)のことですね。
▼大気圧(復習)
\(p_0=1013[hPa]\)
\(p_0=1.013×10^5[Pa]\)
さて、\(ρ\)の中で最も出題されやすいのは、水の密度です。中学の時に密度を習っていると思いますが、実は高校で習う時の密度と値が変わります。中学では「水の密度は1」と強調して教わった人も多いと思いますが、高校物理では「水の密度は\(10^3\)」です。
なぜそんなことが起きてしまうのか。それは単位系の違いなんですね。
中学の時は、小さなものの密度を扱っていたので、化学で使うcgs単位系というものを利用していました。これは[cm] [g] [s]を基本単位としているもので、化学のように比較的小さなものを対象にした分野で使います。物理では化学で使う薬品や実験器具よりは大きな、「物体」を扱う科目なので、mks単位系というものを使います。これは[m] [kg] [s]を基本とした単位の集まりなので、大体の計算ではcmはmに、gはkgに直さないと物理の公式は利用できません。
つまり、水の密度は中学理科ではcgs単位系で\(1[g/cm^3]\)と習っていましたが、高校物理ではmks単位系で、しかも有効数字まで考慮されて\(1.0×10^3[kg/m^3]\)と習うわけです。中学理科の先入観で解かないようにだけ注意をしておきましょう。
▼水の密度
\(ρ=1.0×10^3[kg/m^3]\)