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物基25 水圧

 「水圧」という言葉は、「水の重さによる圧力」「ある深さにおける圧力」の2つの定義があり、どちらが本当の意味での「水圧」を説明しているのかが決まっていません。そのため、表現方法が2種類あるわけです。

 

 例えば、水深10mでの水圧はいくらか、と問われたときに、ある科学者は10m分の水の重みから水圧を計算しようと言います。ところが別の科学者は、水深10mでは水10m分の重みに加えて、さらに大気圧が1気圧分かかっているから、これも加えて表現しないと水深10mでの水圧は正しい値を説明したことにはならないと、そう言うんです。

 

 どちらの説明も理論の部分は正しいですが、「水圧」という言葉の意味のとらえ方に違いがあるので、数値としては異なるものを出しているわけです。

 

 じゃあ、どう判断したらいいのか。いろいろな問題を見ていると、どうやら言葉どおり「水の重さによる圧力」のことを「水圧」と呼び、大気圧も含めて考えている方の水圧は「ある深さにおける圧力」と表現して使い分けているようです。特にややこしく考えなくても、言葉通りに判断したらよさそうですね。

 

▼水圧公式

水圧

 \(p=ρhg\)

 

ある深さにおける圧力

 \(p=p_0+ρhg\)

 

 水圧の公式を見ると、初登場の「\(ρ\)」がいます。この文字は「ロー」と読み、液体の密度を表します。問題を解くときには、「物質の」密度「液体の」密度の両方が同じ問題文中に出題されることがあります。公式を使うときには、「液体の」密度を使うように気をつけましょう。\(h\)は水深、\(g\)は重力加速度です。これはいいですね。

\(p_0\)は前回説明している大気圧です。\(1013hPa\)のことですね。

 

▼大気圧(復習)

 \(p_0=1013[hPa]\)

 \(p_0=1.013×10^5[Pa]\)

 

 さて、\(ρ\)の中で最も出題されやすいのは、水の密度です。中学の時に密度を習っていると思いますが、実は高校で習う時の密度と値が変わります。中学では「水の密度は1」と強調して教わった人も多いと思いますが、高校物理では「水の密度は\(10^3\)」です。

 なぜそんなことが起きてしまうのか。それは単位系の違いなんですね。

 

 中学の時は、小さなものの密度を扱っていたので、化学で使うcgs単位系というものを利用していました。これは[cm] [g] [s]を基本単位としているもので、化学のように比較的小さなものを対象にした分野で使います。物理では化学で使う薬品や実験器具よりは大きな、「物体」を扱う科目なので、mks単位系というものを使います。これは[m] [kg] [s]を基本とした単位の集まりなので、大体の計算ではcmはmに、gはkgに直さないと物理の公式は利用できません。

 

 つまり、水の密度は中学理科ではcgs単位系で\(1[g/cm^3]\)と習っていましたが、高校物理ではmks単位系で、しかも有効数字まで考慮されて\(1.0×10^3[kg/m^3]\)と習うわけです。中学理科の先入観で解かないようにだけ注意をしておきましょう。

 

▼水の密度

\(ρ=1.0×10^3[kg/m^3]\)


大気圧を考慮しない水圧計算

リ物基 基問80

大気圧を考慮する水圧計算

リ物基 基問79

水中の板を支える問題

リ物基 基問81