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物基24 あらい面上の物体の運動

摩擦力が関係する問題

 

 摩擦力が扱われる問題には、いくつかのパターンがありますが、学習スタートの時期にできるようにしておきたいことは、

 

① \(3\)つの摩擦力の、どの摩擦力が働いているかを判別できるようにすること

② それぞれの摩擦力の値を導けること

③ 動摩擦が働いているとき、物体の加速度はいくらなのかを求められるようにすること

 

あたりが着眼点になるかと思います。

 

①については、数式ナシで、どの摩擦力がはたらいているのかだけを判別できればクリアです。意外にもテストで一番ミスが多いのは、静止摩擦力を判別できないことに起因します。

 

②については、公式を覚えて、数字を代入、といういつものシリーズです。判別した摩擦力が正しければ、大して難しくないはずですが、そもそも動いているのに最大摩擦力の公式を使ったり、その逆をしたり、ということがあるので、①でミスがないようにしておきたいです。

 

③については、運動方程式の問題になります。\(ma=F\)の\(F\)の一部分に摩擦力が組み込まれることになりますが、摩擦は運動方向と逆向き、ということを忘れてしまったり、運動方向をとらえ違ったりしてしまって、符号が逆になるミスがよく見られます。

 

注意するべきポイントはこのあたりじゃないでしょうかね。まぁ実際に問題を解きながら、どういうことなのか見てみましょうか。

 

例題

 図のように、あらい水平面上に質\(2.0kg\)の物体を置く。物体と面との間の静止摩擦係数を\(0.50\)、動摩擦係数を\(0.25\)とする。重力加速度の大きさを\(9.8m/s^2\)とする。

 

(1) 物体を水平方向に\(8.0N\)の力で引いたところ、物体は動かなかった。このとき、物体にはたらく摩擦力の大きさ\(f\)は何\(N\)か。

(2) 水平に引く力を大きくしていくと、やがて物体はすべりだす。物体がすべりだす直前の摩擦力の大きさ\(f_0\)は何\(N\)か。

(3) 水平方向に\(14.9N\)の力で引いたとき,摩擦力の大きさ\(f'\)は何\(N\)か。

(4) (3)のとき、物体の加速度の大きさは何\(m/s^2\)か。

 

 [解答]

(1)

 静止しているときの摩擦の問題だな、よし\(f_0=\mu N\)だ、と考えてしまった人。残念でした。もう違います。

摩擦力は全部で\(3\)種類あって、それぞれ、静止摩擦、最大摩擦、動摩擦、でしたね。それぞれの摩擦力と、運動の様子の組み合わせとしては、

 静止している ⇒ 静止摩擦

 動き始める  ⇒ 最大摩擦

 動いている  ⇒ 動摩擦

と使い分けるものです。いま、(1)の設定では、単に静止しているだけで、物体が動き始める瞬間なのかどうかは分かりませんので、単なる力のつり合いの問題です。摩擦係数は使いません。

 物体に\(8.0N\)の外力を加えたので、摩擦力はそれとつりあって、\(8.0N\)。これだけです。

 

(2)

 すべり出すときをピンポイントで聞いています。これが最大摩擦の問題です。

最大摩擦の公式は\(f_0=\mu N\)で、垂直抗力\(N\)は、重力の\(mg\)とつりあうので、

 \(f_0=\mu N\) より

  \(=\mu mg\)

  \(=0.50×2.0×9.8\)

  \(=9.8N\)

となります。このとき使っている摩擦係数は、静止摩擦係数の方ですので、間違って動摩擦係数を使わないようにしてください。

 

(3)

 話の流れ的にも、問題文的にも\(f'\)を求めよ、と言われているので、動摩擦を求める問題だということは分かります。ですが実際には、最大摩擦を超える外力であるかどうかを判別してからでないと、動摩擦の公式を使っていいかどうかは分かりません。

 この問題では、(2)で、最大摩擦が\(9.8N\)と求まっているので、それより大きい\(14.9N\)の力で物体を引けば、当然、物体は動いているものだ、と考えることができます。

 

 怖いのは、問題文では\(f'\)を求めよ、と書いてあるのに、これが動摩擦ではない場合も設定上は作れる、ということです。盲目的に動摩擦だな、と判別してしまわないように気をつけておかないといけませんね。

 

 さて、動摩擦の問題だと判別ができたら、あとは公式に代入して計算しましょう。

 \(f'=\mu' N\) より

  \(=\mu' mg\)

  \(=0.25×2.0×9.8\)

  \(4.9N\)

となりました。(2)と比較すると分かりますが、最大摩擦力より、動摩擦力の方が大きさは小さくなりますので、計算してみて、最大摩擦力の大きさよりも大きい動摩擦力が出てきてしまったら、その時点でミスに気づきます。検算の一つとして知っておいてください。

 

(4)

 さて、動摩擦力をうけていても、物体が加速することはあります。平地で自転車をこいでいて、ペダルから足を放すと自転車の速さは遅くなりますよね。これは動摩擦力がはたらいている証なんですが、この平地で自転車をこげば、もちろん自転車を加速させることができますね。

 動摩擦力がはたらいていても、物体は加速できますし、減速も等速も、条件次第で作り出すことができますので、加速度の大きさは正になるのか負になるのか、はたまたゼロなのか、これは計算してみないことには分かりません。

 

 加速度を求めるときは、運動方程式を使うのが王道ですね。いま、物体は右向きに\(14.9N\)で引っ張られていて、左向きに\(4.9N\)の動摩擦力がはたらいています。なのでおそらく物体は右向きに加速しているでしょうから、右向きを正としてやって運動方程式を立ててやりましょう。

 \(ma=F\)より

 \(2.0a=14.9-4.9\)

 \(2.0a=10.0\)

 \(a=5.0m/s^2\)

となりました。

 

よって、加速度の大きさは、\(5.0m/s^2\)です。