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波動3 波の屈折

屈折原理が発見される前にあった2つの仮説

 空気中から水中に光が入射されると、光は水面で折れ曲がって進行します。この現象を「光の屈折」と言います。

[仮説1] 「光は水中で遅くなる」

 光は直進します。ところが、水面に斜め向きに光が入射したとして、水中で光が遅くなったと考えます。

 

 すると、図のように、光そのものは真っすぐ進もうとしているけれど、人間は波面としてしかとらえることができないので、光は進行方向を曲げて進んだように見える、という考え方です。

 

 ちょうど、ボールを水面に投げ込むと、空中で速かったボールも、水中に入ると途端に遅くなってしまって、軌道が垂直に近づく、というイメージに似ていて、水中の方が抵抗が強いんだから遅くなるに決まってるし、そのために軌道が折れ曲がっても不思議ではない、という考え方です。

 

[仮説2] 「光は水中で速くなる」

 もう一つの仮説は、仮説1と逆で、水中で光の速さが速くなる、という考え方です。

 

 光が進んでいるとき、光の成分を図のように縦方向と横方向に分けて考えたとすると、水中に入ったときには、光の速さの成分のうち、水面に垂直な軸方向の速さが速くなると考えると、光の屈折の説明は論理的に説明ができるんだ、という考え方です。

 

 

 当時、このどちらの説が正しいのかは分かりませんでした。どちらの考え方も論理的に正しそうで、また、それを上手に実験で示すことも難しかったのです。

 

波の屈折

 結論から言うと、2つの仮説のうち、正しかったのは[仮説1]でした。

 仮説1が提唱されたあと、ホイヘンスという科学者が表れて、仮説1の考え方を支持する立場で説明したところ、そのほかの実験結果とも整合性が取れ、どうやら仮説1の方が信ぴょう性が高いぞ、ということになったのです。

 

 では、ホイヘンスが現れる以前、仮説1はどのように説明されていたのでしょうか。この論を説明している科学者の一人にスネルという科学者がいます。「波の屈折の法則」は、このスネルの名前にちなんで「スネルの法則」とも言います。

 

 スネルは、光線の入射角と屈折角の正弦(\(\sin\theta\))の比が常に一定であると発見しました。

 

 入射角の大きさを変えると、屈折角もそれにともなって変わりますが、その比は常に一定の値を示しますので、これを「屈折率」と呼ぶことにし、次のように表すことにします。

 

 

▼屈折の法則

 

 \(n_{12}=\displaystyle\frac{\sin i}{\sin r}\)

 

 \(n_{12}\):媒質1に対する媒質2の屈折率

 \(\sin i\):入射角

 \(\sin r\):屈折角

 

 その後、ホイヘンスが現れ、屈折の法則は、波の速さや波長などにも踏み込んで、もう少し詳しく説明された形に進化します。それは光の単元に入ったときか、ホイヘンスの原理のあとか、もう少し話が進んできたころに登場させようと思います。

 

 今はシンプルに、入射角と屈折角の比が一定値をとる、ということだけで話をやめておきますね。