■解答
問1 大きさ:\(F=qvB\) 向き:\(Q\rightarrow R\) 問2 \(E=vB\) \(V=vBd\) 問3 \(gt\)
問4 \(I=\displaystyle\frac{vBd}{R}\) 問5 \(F=\displaystyle\frac{vB^2d^2}{R}\) 問6 \(v_0=\displaystyle\frac{mgR}{B^2d^2}\)
問7 しだいに速くなる 問8 \(v_0+g(t-t_0)\) 問9 \(T=T_0+\displaystyle\frac{2gl-v_0^2}{2c}\)
■解説
問1
正電荷について考えていますので、フレミング左手の法則で考えるのがいいでしょう。
コイルが落下すると、辺QR内の正電荷も落下しますので、図の下向きに電流が流れていると解釈します。
磁場は紙面の表から裏向きにかかっていますので、力は図の右向き(\(Q\rightarrow R\))にかかります。
その大きさは、
\(F=qvB\)
問2
問1の運動により、点Q側が負、点R側が正となり、電場が発生します。これによって電荷にはたらく力がつり合うと、電荷移動がなくなります。つり合いの式より
\(qE=qvB\)
\(E=vB\)
また、回路の太さは無視できるほど細いので、生じた電場は一様です。
なので発生する起電力の大きさは
\(V=Ed\) より
\(V=EvB\)
となります。
問3
流れる電流は無視できる、と書いてありますので、スイッチが開いているコイルが落下するときは単なる自由落下運動です。
なので \(gt\)
もしこの問題で、流れる電流が無視できないとします。たとえスイッチが開いていても、QからRに電荷が寄せ集められる間だけはわずかに電流が流れることになり、この電流によってコイルの運動を妨げる向きへの力が発生してしまうことになります。
ここまで考慮すると、時間ごとに変化する電流の大きさまで考えないといけないことになり、計算が煩雑になりそうですが、今そういった設定は無視しましょうとなっているので、単なる自由落下として考えます。
問4
「電流\(I\)を求めよ」とだけ問われていますので、この場合は大きさのみを答えるのがいいでしょう。
電流\(I\)はスカラー値であって、ベクトルではありませんので、通常、「電流を求めよ」と問われたら、電流の大きさのみを答えることになります。電流を数式の上でベクトルのように扱う場合には、電流密度として考える必要があり、この場合は高校範囲を逸脱してしまいます。なので「電流を求めよ」と問われたときに向きも答えなくてはいけない、という情報は含んではいけないことになるかと思います。
電磁誘導の式から、発生する起電力は
\(V=vBd\)
となります。これは問1からもわかるように、\(Q\rightarrow R\)の向きに発生しています。
よって、回路の抵抗を\(R\)としたときに流れる電流は
\(I=\displaystyle\frac{vBd}{R}\)
となります。
問5
辺\(PQ\)と、辺\(RS\)には互いに逆向きの電流が発生しますので、電流の向きが分からなくても、発生する力が水平方向に打ち消し合うことは分かります。さらに深読みすると、磁場中の平行導線が互いに逆向きに電流を流すことから二本の平行導線間に斥力が発生しますが、これも水平方向には力が打ち消されますので、考える必要はなくなります。
結局、紙面表から裏向きに磁場がかかっている領域で、図の右向きに電流を流すとどのような力がかかるか、という部分だけが問われていることになりますので、フレミング左手の法則から、図の上向きということになります。
また、力の大きさは、同じくフレミングの公式から、
\(F=IBd\)
\(F=\displaystyle\frac{vB^2d^2}{R}\)
問6
等速になったとき、問5の力と重力がつり合います。このときの速さを\(v_0\)とすると、
\(\displaystyle\frac{v_0B^2d^2}{R}=mg\)
\(v_0=\displaystyle\frac{mgR}{B^2d^2}\)
問7
辺\(PS\)も磁場中に入ってしまうと、コイル内部の磁場が変化することがなくなります。誘導起電力も誘導電流も消失し、単なる自由落下となりますので、当然ながらに、しだいに速くなる、を選ぶことになりますね。
問8
そのときの速さは、初速度が\(v_0\)の鉛直投げおろし運動と解釈して、
\(v=v_0+g(t-t_0)\)
問9
ジュール熱の計算ですが、\(Q=VIt\)から計算すると、\(I\)が時刻\(t\)の関数ですので、積分を使うことになります。
この問題では、失ったエネルギーが全て熱に変換されていると読んで、エネルギー差から計算する方が楽ですし早く正確です。
加熱が起こるのは\(t=t_0\)までの時間であることに注意して、エネルギー保存則の式を立てると
\(mgl=\displaystyle\frac{1}{2}mv_0^2+mc(T-T_0)\)
\(2gl-v_0^2=2c(T-T_0)\)
\(T-T_0=\displaystyle\frac{2gl-v_0^2}{2c}\)
\(T=T_0+\displaystyle\frac{2gl-v_0^2}{2c}\)