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物基30 力学的エネルギーの保存

エネルギー保存則

 なめらかな斜面上の、高さ\(h\)のところに、質量\(m\)の物体をおいて、静かに放したとします。すると、物体は斜面上を滑って、ある速さで地面に到達します。このときの物体の地面での速さをエネルギー保存則を使って考えてみましょう。

 

斜面の上部と地面のそれぞれで、エネルギー状況を表にまとめてみましょう。

 

▼エネルギー公式

 位置エネルギー

  \(U=mgh\)

 運動エネルギー

  \(K=\frac{1}{2}mv^2\) 

 

 

  地面 斜面の上
位置エネルギー

0

\(mgh\)
運動エネルギー \(\frac{1}{2}mv^2\) 0
力学的エネルギー E E

 

重力加速度の大きさは\(g\)ということにしておきます。

力学的エネルギーは、位置エネルギーと運動エネルギーの和なので、それぞれの点における力学的エネルギーは、表から、

 斜面の上:\(E=mgh+0\)

 地面の上:\(E=0+\displaystyle\frac{1}{2}mv^2\)

となります。いま、摩擦や空気抵抗を無視することができるとすると、力学的エネルギーが保存しますので、\(2\)つの力学的エネルギーの大きさは等しくなります。

 

よって、斜面の上と地面との間での力学的エネルギー保存則より

 \(mgh=\displaystyle\frac{1}{2}mv^2\)

 

\(×\displaystyle\frac{2}{m}\)

 

 \(2gh=v^2\)

 

 \(v=\sqrt{2gh}\)

となりました。

 

 このように、力学的エネルギーの保存を利用するときは、各点での運動エネルギーや位置エネルギーを全部書き出してしまって、それを足したものがいつでも一定である、ということを利用して数式を追いかけていくのが王道です。

 

 

弾性エネルギーが関わるエネルギー保存則

 ばね定数\(k\)のばねに、質量\(m\)の物体をつるして、自然長から静かに放したとします。するとばねを伸ばしながら物体が落下していきました。ばねの長さが\(x\)だけ伸びたときの物体の速さをエネルギー保存則を使って考えてみましょう。

 

先ほどと同じように、図の左側と、右側とのそれぞれで、エネルギー状況を表にまとめてみましょう。左の図が、ばねが伸びて物体も動いているとき、右の図が初期状態ということにしておきます。

 

重力加速度の大きさは\(g\)ということにしておいて、高さの基準面は、初期位置の高さに決めておきます。

 

▼エネルギー公式

 位置エネルギー

  \(U=mgh\)

 運動エネルギー

  \(K=\frac{1}{2}mv^2\) 

 弾性エネルギー

  \(U=\frac{1}{2}kx^2\) 

 

 

  左の図 右の図
位置エネルギー

\(-mgx\)

0
運動エネルギー \(\frac{1}{2}mv^2\) 0
弾性エネルギー \(\frac{1}{2}kx^2\) 0
力学的エネルギー E E

 

 

力学的エネルギーは、位置エネルギーと運動エネルギーの和なので、それぞれの点における力学的エネルギーは、表から、

 右の図:\(E=0+0+0\)

 左の図:\(E=-mgx+\displaystyle\frac{1}{2}mv^2+\frac{1}{2}kx^2\)

となります。いま、摩擦や空気抵抗を無視することができるとすると、力学的エネルギーが保存しますので、\(2\)つの力学的エネルギーの大きさは等しくなります。基準面の取り方の都合上、力学的エネルギーが\(0\)になっていますが、高さの基準をどこにするかは自由に決められますので、それにともなって、力学的エネルギーも正だったり、負だったり、場合によっては今のようにわざと\(0\)に設定することもできます。あれ?なんでゼロなんだ?という悩みはあまり意味がありません。そうなるように自分で決めた、ということです。

 

 

さて、図の左右での力学的エネルギー保存則より

 \(-mgx+\displaystyle\frac{1}{2}mv^2+\frac{1}{2}kx^2=0\)

 

\(×\displaystyle\frac{2}{m}\)

 

 \(-2gx+v^2+\displaystyle\frac{k}{m}x^2=0\)

 

 \(v^2=2gx-\displaystyle\frac{k}{m}x^2\)

 

 \(v=\sqrt{2gx-\displaystyle\frac{k}{m}x^2}\)

 

となりました。

 

 設定が複雑になったとしても、結局やるべきことは、考えたい\(2\)点での力学的エネルギーをそれぞれ表に書き出してしまって、それらの和が等しくなることを立式してやればいいわけです。

 

 ここでの講座ではすべて文字で説明しましたので、ちょっと分からんかったわーという人もいるでしょう。ですが、押さえておいてほしいのは、表を作って、それぞれのエネルギーの値を埋めていく、という作業をすることで解きやすさや凡ミスが格段に減る、ということです。

 

 問題演習を通して理解を深めていきましょう。