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電磁気5 電位

静電気による位置エネルギー

 力学では、質量\(m\)の物体を高さ\(h\)まで持ち上げるとき、\(mg\)の力で\(h\)だけ動かすので、持ち上げるのに要した仕事は\(U=mgh\)で表されます。力学ではこれを位置エネルギーとして紹介することにします。

 

 これと同じように、電荷\(q\)を距離\(d\)だけ動かすとき、\(qE\)の静電気力で\(d\)だけ動かすので、要した仕事の量は\(U=qEd\)という表現で書かれます。これはちょうど電気分野でいうところの位置エネルギーに相当するので、静電気による位置エネルギーと呼ぶことにします。

 

 \(E\)や\(g\)の中身を正式に書くと、少し複雑な式になって、それぞれ\(U=k_0 \displaystyle\frac{q_1 q_2}{r}\)\(U=-\displaystyle\frac{GMm}{r}\)となります。

 

 万有引力による位置エネルギーの式を知っていれば、静電気による位置エネルギーは文字を変えるだけで公式を作ることができるので、類似性を利用するのが便利ですね。

 

 ちなみに、符号が逆になっているのは、万有引力では質量\(+M\)と質量\(+m\)の物体が引力を及ぼすのに対して、静電気は\(+q_1\)と\(-q_2\)の電荷どうしに引力がはたらくと決めてありますので、その符号の違いですね。

 

 万有引力のエネルギーを忘れてしまった人は、単純に、クーロンの法則から自分で作ることもできます。エネルギーは仕事と単位的には同じものですから、力×距離で計算できます。クーロン力が\(F=k_0 \displaystyle\frac{q_1 q_2}{r^2}\)で、距離\(r\)だけ動かしたとすると、掛け算の結果、約分がきいて単純に分母が\(r\)になるだけですね。マイナスがどこからやってきたか、という話は、どこまで詳しく話をするべきか悩むところですが、無限遠を基準にするとその高さより下側なので符号はマイナスになる、というぐらいの認識があれば十分です。

 

電位

 電気分野では、\(+1C\)の試験電荷を用意して、\(+1C\)あたりでは、という物理量で説明をすることがあります。静電気による位置エネルギーも\(+1C\)あたりで考えた場合の量がルールづけされています。通常、静電気による位置エネルギーは\(U=qEd\)ですが、\(+1C\)あたりでは\(Ed\)になります。これを電気的な位置エネルギー、略して「電位」と呼び、単位は「\(V\)」にすることを約束します。

 

 つまり、「電位」とは、ある位置に試験電荷を置いたときに、その電荷が持つ静電気による位置エネルギーの大きさを表すわけです。式で書けば、\(V=Ed\)です。これが\(q[C]\)あたりになれば、エネルギーは\(q\)倍になるので、\(U=qV\)となります。

 

 これは電気分野特有の表現で、力学で同じようなことをしても、\(mgh\)の\(m\)を1とした\(gh\)には、特に便利なことなんかありません。こじつけたら何らかの法則っぽいものはできるかもしれませんが、便利かと言われると、あんまりだと思いますよ。私は一応やってみましたが…。

 

点電荷の周囲の電位

 静電気による位置エネルギー\(U=qEd\)において、\(q=1\)と考えた量が電位でした。これと同じようにして、正式に書いた静電気による位置エネルギーの大きさ \(U=k_0 \displaystyle\frac{q_1 q_2}{r}\)も、\(+1C\)あたりの量で考えてみます。すると\(k_0 \frac{q}{r}\)という量が登場しますね。これも電位の表現方法の一つです。

 

 つまり、点電荷のまわりの電位は \(V=k_0 \displaystyle\frac{q}{r}\)で特徴づけられるわけです。

 

 ここまで、立て続けに公式がぞろぞろと登場してきました。まずは公式を覚えるところからスタートですが、一覧表を作って覚えやすいように配置した図を載せました。それぞれの文字が何を表しているのか、単位は何なのかということは自分で準備しながら、学習に活用してください。

 

 表のうち、十字内に書かれた4公式は点電荷の周囲の様子を表す公式です。点電荷からどのくらいの距離離れているかで状況が変わってしまうので、「一様ではない電場」での公式ということになります。一方で、欄外にある4公式は、距離によらず、どこでも「一様な電場」中でどうなっているか、という問題のときに使うことが多い公式です。電場が一様であるか一様でないかで使い分けるといいでしょう。