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電磁気6 等電位面

等電位面(線)

 電位が等しい点をつないで面状、もしくは線状にしたもののことを「等電位面」あるいは「等電位線」と呼びます。等電位線は、電気力線と垂直に交わる性質があります。

 

 電気力線は、ある点に\(+1C\)を置いたときに、力を受ける方向を矢印で示したものでした。なので、たとえば正電荷と負電荷があったとして、その途中に\(+1C\)を置いたとすると、この\(+1C\)は正電荷から斥力をうけて、負電荷から引力を受けるので、やがて負電荷の方へ引き寄せられるように動き出します。

 

 これを高さのイメージで考えなおしてみます。正電荷がある場所は電位も高いので、山の頂上と考えます。一方で、負電荷は電位が低いので谷底だと考えます。この間に\(+1C\)のボールを置いたとすると、ボールは高い方から低い方へ自動的に転がっていきます。このとき、転がっていく方向が電気力線の向きに相当するわけです。

 

 そう考えると、坂道が急な山頂の近くや谷底の近くは、ボールが動く速さも速くて、ちょうど中間地点くらいの坂道が緩やかなところは、ボールの動きも緩やかになるイメージと結びつけられるんじゃないでしょうか。こんな風にボールを動かすための空間を電場と呼んでいて、ボールが今どの高さにあるかを電位と呼んでいるわけです。だから、電気力線と等電位線が垂直なのは偶然ではなくて、必然的なものなんですね。

 

等電位面(線)の性質

 等電位線の性質は、等高線や等圧線の性質、電気力線の性質と同じです。まず1つは、線の間隔が狭ければ、電場が強いということ。2つ目は、等電位線上に沿って動いても電荷を動かす仕事は0であるということです。

 

 等電位線上で電荷を動かそうとすると、斜面に沿って電荷が落ちてしまわないように、斜面の上方向に支えながら動かすことになります。何もしなければ斜面下方向に静電気力を受けますから、人間が斜面上方向に力を加えて、力がつり合った状態にしておきます。 このとき、高さを保ったままで電荷を動かすために、横から力を加える必要もありません。ふつう、こういう議論がなされるときには「静かに運ぶ」というようなことが書いてあるんですが、「静かに運ぶ」という物理表現は、力を加えないか、加えていてもつり合っていて合力として考えると力が加わっていないことになる状態のことをいいます。 だから、仕事を計算しようとしても斜面の上下方向に力がつり合っていて、動かし方も「静かに運ぶ」わけですから、合力は0ということになります。

 

 仕事は力と移動距離との積ですから、どれだけ動いても合力が0なら仕事も0です。等電位面上に沿って動かすときの仕事は0という事実は知っているだけで解ける問題の1つですから、覚えていて損はないですよね。沿ってない動かし方のときは0じゃないですよ。 他にも等電位線には、枝分かれしないとか、途中で途切れないとか、線同士が接することがないとか、そういうこまごました性質はありますが、あんまり悩むようなポイントではないので軽く流しときます。

 

電場と仕事

 じゃあ、等電位線に沿わないで動かすときには、具体的にどのくらいの仕事をすることになるのかを考えてみることにします。このときも暗黙の了解で物体を「静かに運ぶ」ときの仕事を考えていることにします。

 

 まず力学でいうところの仕事について思い出しましょう。質量\(m\)の物体を支えるためには、物体に重力が\(mg\)だけかかっているので、外力を\(mg\)だけ加える必要があります。この力を加えた状態で、上に\(h\)だけ「静かに運ぶ」ときの、手がした仕事を求めます。\(W=Fx\)より、\(W\)は\(mg×h\)で\(mgh\)となり、結果的にちょうど位置エネルギーの増加分と一致します。

 

 一方で、下に\(h\)だけ「静かに運ぶ」ときには、上向きに力を加えながら、下向きに\(h\)だけ進むので、符号が逆になって\(W=mg×(-h)=-mgh\)となります。 同じようにして、電場による仕事も計算してみましょう。

 

 電荷\(q\)を電場\(E\)中に置くと、クーロン力を受けて\(F=qE\)の力で極板に引き寄せられます。なので、これを支えるためには人が外から\(qE\)の力で支えなければいけません。 この力を加えた状態で、+の極板、言い換えると、電位の高い方に距離\(d\)だけ「静かに運ぶ」と、手がした仕事は\(W=qE×d=qEd\)となります。

 

 ここで、\(V=Ed\)という公式があったことを思い出せば、\(W=qV\)と書くこともできます。 逆に、電位の低い方に距離\(d\)だけ「静かに運ぶ」ときには、手がした仕事は加えている力の向きと反対方向に動くことになるので、\(W=qE×(-d)=-qEd=-qV\)となります。

 

 これらの2つの式の使い分けは、問題文の中に与えられている設定が\(E\)なのか\(V\)なのかを見分けると簡単に判別できます。電場\(E\)の中で電荷を動かします、という設定なら\(W=qEd\)の公式を使えばいいし、等電位面の図中で電荷を動かします、というような設定なら\(W=qV\)の公式を使うことになります。

 

 

等電位面と仕事

 実際に等電位線上で電荷を動かすとして、手がした仕事がどのくらいになるのか計算してみましょう。図を見てください。

 

 電位が\(30V\)の点に\(+2C\)が置いてあります。この電荷を①の点まで運ぶときの仕事は、等電位線に沿っての移動ですから計算無しで\(W=0\)ですね。これは見た瞬間に答えられるようにしておきましょう。

 

 次に①から②に運ぶときの手がした仕事について考えます。電位は\(30V\)のところから\(-20V\)のところへの移動ですから、電位の変化分は\(-50V\)分に相当します。\(W=qV\)から、\(W=2×(-50)=-100J\)が答えです。

 

 最後に有効数字を調整する作業がいりますので、問題文を見て最終の答えはどう答えたらいいのかは判断してください。

 

 この移動に関して、力学的エネルギー保存則のときと同じように、経路の取り方は関係ありません。始点と終点の値だけで計算が可能で、その電位差がどのくらいか、という数値だけで計算させることができます。

 補足ですが、このように静電気力は、経路によらず支点と終点の計算だけでエネルギー保存則が成立しています。こういうとき、保存則が成立するような力、ということで、静電気力は「保存力」の一つだ、といえます。他にも、重力も「保存力」の一つでしたね。

 

 ②から③に運ぶときの電場がした仕事は、電位が\(-20V\)から\(10V\)のところへの変化ですから、電位の変化分は\(+30V\)分です。ところが罠がひとつ隠れています。電場の正の向きは+から-です。だから電位の変化は\(-30V\)になります。「+30V上がる」ことは「-30V下がる」ことと同じです。「-を正とする」ということは、「いくら下がりますか」という問いかけと同じ意味だということです。すると、\(W=qV=2×(-30)=-60J\)が答えになります。この罠はよく引っかかりますので、何がした仕事かをよく読むようにしておいてください。