万有引力
ケプラーの法則が提唱されてから約80年後、ニュートンによって万有引力の法則が導き出されました。ここでは、その導出の過程を追いかけていこうと思います。
惑星の公転軌道は円に近いので、太陽を中心とする等速円運動をしているとします。\((a≒r)\)
惑星の質量を\(m\)、軌道半径を\(r\)、公転角速度を\(\omega\)とすると、向心力の大きさは、
\(F=mr\omega^2\)
ここに、周期の公式 \(\omega=\displaystyle\frac{2\pi}{T}\) を代入して、
\(F=mr・\displaystyle\frac{4\pi^2}{T^2}\)
さらに、ケプラーの第三法則 \(T^2=ka^3≒kr^3\) を代入して、
\(F=mr・\displaystyle\frac{4\pi^2}{kr^3}\)
\(=\displaystyle\frac{4\pi^2}{kr^2}・m\)
こうして、地球の向心力の大きさが求まりました。ここで\(k\)は、惑星の種類によらない定数でした。これは、次に見る式変形で重要になることなので、太文字で示しておきます。
一方、作用反作用が成立しますので、同様の式変形をすると、太陽が地球に落ちようとする力も、
\(F'=\displaystyle\frac{4\pi^2}{k'r^2}・M\)
と書くことができます。ここで、\(k'\)は、今度は太陽によらない定数となります。
作用反作用の法則で、この2力は同じ大きさですので、
\(\displaystyle\frac{4\pi^2}{kr^2}・m=\frac{4\pi^2}{k'r^2}・M\)
と書くことができ、両辺\(r^2\)倍して\(m\)、\(M\)を移項すると
\(\displaystyle\frac{4\pi^2}{kM}=\frac{4\pi^2}{k'm}\)
となります。
左辺の\(k\)は惑星によらない定数で、太陽の質量\(M\)も惑星によらない定数です。
右辺の\(k'\)は太陽によらない定数で、地球の質量\(m\)も太陽によらない定数です。
この2つがイコールで結ばれているということは、惑星にも太陽にもよらない定数として、新たに文字を設定することができ、
\(\displaystyle\frac{4\pi^2}{kM}=\frac{4\pi^2}{k'm}≡G\)
としてやることができます。これは、どの天体にもよらない普遍的な定数で、これを「万有引力定数」とよんでいます。
\(\displaystyle\frac{4\pi^2}{kM}≡G\)
から
\(\displaystyle\frac{4\pi^2}{k}=GM\)
とすることができますから、これをもとの式
\(F=\displaystyle\frac{4\pi^2}{kr^2}・m\)
に代入すると、
\(F=F'=G\displaystyle\frac{Mm}{r^2}\)
という式を作ることができます。
こうして、太陽と地球の間にはたらく万有引力を導出したニュートンは、この力が、太陽と地球という特別な2つの間についてはたらく力ではなく、地球とリンゴ、物体と物体、といったようなものでも、万物に共通してはたらく力であると提唱しました。
▼万有引力の法則(1687)
\(F=G\displaystyle\frac{Mm}{r^2}\)
\(G\):万有引力定数\((≒6.67×10^{-11}[N・m^2/kg^2])\)